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社説:自民党 与野党協議を拒むな

 4月の統一地方選で勝利し菅政権を衆院解散・総選挙に追い込む。23日の自民党大会は昨年とうって変わって強気の姿勢が目立った。だが、野党転落から約1年半経過し、自民党への国民の信頼が回復したかといえば、そうとはいえない。

 特に「何も動かない国会」に対しては与野党通じて国民の厳しい目が向けられているように思われる。通常国会が24日から始まる。今、国民が何を求めているのか。自民党もそれを見失わない対応が必要だ。

 大会の演説で谷垣禎一総裁は「民主党の失政を徹底的に追及する」とアピールした。ただし、「といって、いたずらに国会審議を混乱させない」と付け加えたのは、やはり世論を意識したものだろう。

 毎日新聞が菅内閣の再改造直後に行った世論調査では自民党の支持率は21%で民主党を1ポイント逆転した。しかし、両党合わせても「支持政党なし」の42%に及ばず、政党政治そのものの危機的状況が続いている。しかも、この調査で国会での与野党のあり方について聞いたところ、「互いに対決すべきだ」が30%だったのに対し、「双方譲り合うべきだ」は64%に上っている。

 自民党は新年度予算案と予算関連法案に反対する構えを見せている。衆院の議決が優先する予算案はともかく、野党がそろって参院で反対すれば関連法案は成立せず、菅直人首相は追い詰められる。だが、予算が執行できない混乱状況に至れば批判の矛先は自民党に向かう可能性がある。そこまでの覚悟はあるのか。

 税と社会保障の一体改革についても同様だ。谷垣氏はこの日、菅首相が与謝野馨氏を経済財政担当相に起用したことを強く批判し、「与野党協議においそれとは応じるわけにはいかない」と語った。しかし、昨年の参院選で消費税率を当面10%に引き上げる公約を真っ先に掲げ、議論をリードしたのは自民党だ。

 当時、私たちはその姿勢を評価したが、自民党内では統一地方選前に増税に言及するのは得策ではないとの声が強まり、一転、菅政権を批判するだけで政策論には口を閉ざしている印象だ。それでは「選挙目当て」と民主党を批判できない。無論、政権側が案をまとめるのが先だが、与野党協議に加わり、国民の将来のための議論を前に進める時ではないか。

 この日採択された運動方針では昨年の参院選での自民党勝利について「『政権に戻ってこい』との意思表示ではなく『いまの政権をしっかりチェックしろ』と理解するのが正しいのでは」と謙虚に分析し、「かつての民主党のような『反対のための反対』はしない」とも明記した。ぜひ、そうあってほしい。

毎日新聞 2011年1月24日 2時32分

 

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