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【コラム】『ポテチの手』について真面目に考察する

友達を家に招いてゲーム祭り。週末の一大イベントだ。それぞれ好きなお菓子や飲み物を持ち寄り、さあ、今夜は遊び倒すぞ。対戦の順番を待つ間にだらだらと雑誌を読みつつお菓子をつまむ。よし、オレの番か。ぺろりと指を舐めたり舐めなかったり、そしてコントローラをつかむ。ふと気になるその行動。いやいや、ちょっと待て待て。今はこんな便利なモノがあるんだ。

 一見してジョークグッズやおもちゃにしか見えないミニマジックハンド『ポテチの手』だが、何か匂うものがある。真剣に向き合ってみる価値はありそうだ。

 

 

 

 

遊び心満載の新システム搭載

 タカラトミーから発売された『ポテチの手』は、ポテトチップスなどをつまんで食べる時に油で手を汚さないためのマジックハンドだ。しかし、たかがマジックハンドと侮ることなかれ。そこは天下の玩具メーカー、タカラトミーだ。しっかりと遊び心満載のギミックを仕掛けている。

 

・対象物破損防止クラッチ機構 NBCS(No Broken Clutch System)

 ポテトチップスをつまんだ時に力がかかり過ぎてポテトチップスそのものを粉砕してしまわないように、稼動指部分にはクラッチ機能が搭載されている。この柔らかい力加減が意外と優秀で、普通のポテチだけでなく、厚切りカットのポテチも、イレギュラーで空気が含まれてぷくっと膨れているポテチもソフトタッチで挟み込め、つまみ取ったポテチを口であむっとついばむだけでするっと持っていくことができる。

 

 

・擬似指先クリーニング機構 FECS(Finger Easy Cleaning System)

 ポテトチップスを食べた時に無意識に指先をフリフリして粉を落とす仕草をしてしまうのはヒトとしての生まれ持った特性だ。この『ポテチの手』にもその本能は引き継がれている。本体のボタンを押し込んだまま前にスライドさせると指先をフリフリと粉を落とす仕草をする。指先に付着したこの粉が美味いんだよ、というハッピーパウダー至高派の皆様には無用なシステムか。

 

 

・指先机上非接触機構 NTTS(No Touch Table System)

 本体には小さなスタンドが設置されてあり、『ポテチの手』をテーブル上に置いた時でもポテトチップスをつまむ指先の部分はテーブルに接触することがなく、たとえ指先が油まみれになっていても最後まで衛生的に使用することができる。

 

 

 さらに10月にはシリーズ第二弾となる『ポップコーンの手』が発売され、義指が縦軸に作動する『ポテチの手』ではつかみ難い粒状や厚みのあるスナック菓子にも対応した義指が横軸に作動する仕様となっている。搭載ギミックもシリーズ第二弾ということでよりパワーアップ、と思わせておいてやや斜め上に向かっている。

 

 

・適正握力補正機構 TGS(Tough Grip System)

 それぞれ形が異なるポップコーンでもするっと逃がすことなく、丸型でも楕円形でも歪な形でもつかみ取ることができる。スライスされたポテトチップスよりも粒状のポップコーンの方が力をかけずにつかみ取りやすいせいか、握力はやや弱めに設定されている。

 

 

・セレブリティースタンド機構 CSS(Celebrity Stand System)

 本体の小指を手動で立たせることにより、小指をピンと立ててお上品にポップコーンをつまむセレブスタイルを演出することができるシステム。しかもスタイルだけではなく小指を立てることにより、指先がテーブル面などに直接触れないよう本体を支えるスタンドとしても機能する。『ポップコーンの手』を持つ手の小指も立たせることでダブルセレブリティーモード発動だ。

 

 

・気分向上指パッチン機構 TUS(Tension Up System)

 『ポップコーンの手』がパーティーの場で最大限に活躍するであろう目玉機能だ。ボタンを押しながら後方へスライドさせることによりいわゆる「指パッチン」の仕草をして、本体からぱちんっと音が鳴り、場を盛り上げること間違いなし。これで「指パッチン」ができない人でも何か素晴らしいアイディアを思いついた時に周囲にアピールすることができるようになる。

 

 

 

 このシステマティックなギミック、そしてシステムの名付け方と略称が心の琴線に触れた人はいるか。

 

 そう、昔懐かしいファミコンやスーファミのゲームシステムの名付け方と同じ方向性で、なんとも無理矢理感に満ち満ちているのである。

 

 ゲームをデザインする時、出来る事が限られていた時代があった。データ容量的にもハード機能的にも限界があり、技術的制約でがんじがらめにされてデザインされたゲームをどうやってより多くのユーザーに手にとってもらうか。ものすごい数のライバル達を押し退けて、制約だらけの中を考えに考え抜いたこのゲームシステムを遊んでもらうためにはどうすればいいか。

 

 現在とは違いファミコン全盛期当時は情報媒体も限られており、とにかくインパクトのあるセールスポイントを打ち出し、一瞬でユーザーの心をわしづかみにする必要があったのだ。

 

 ◯◯システム搭載! ◯◯システム採用! このワクワクドキドキ感溢れるキーワードに、僕達はどれだけ想像力を働かせて心を踊らせたことか。

 

 

 

いろんなお菓子を実際につまんでみる

 いくら新システム搭載だろうと、それがおもしろいかそうでないかは遊んでみれば一目瞭然だ。早速『ポテチの手』の使い勝手を試してみよう。

 

 プレイ開始時に自機や武器を選択できるシステムはシューティングゲームによく見られる。連射性にすぐれた貫通力のある前方集中攻撃型ショットか、一発一発の攻撃力は低いが攻撃範囲が広い広域型ワイドショットか。それと同じように『ポテチの手』か『ポップコーンの手』かを選択する時に、すでに戦いは始まっている。『ポテチの手』と『ポップコーンの手』の性能差は、まさにシューティングゲームの連射ショットとワイドショットのそれだ。

 

 

左『ポテチの手』 右『ポップコーンの手』 義指の間隔は約2倍

 

本体ボタンを押した状態。『ポテチの手』は義指がほぼぴったりくっつくのに対して、

『ポップコーンの手』には若干の隙間が認められる

 

 

 『ポテチの手』は義指間の間隔が狭く、平たいポテトチップスをつまむのに適した握力を持っている。義指は縦軸に作動し、お皿に盛られたポテトチップスの狙った一枚の下に親指部を滑り込ませて人差し指部を稼動させてつまむ。本体ボタンは親指押しスタイルと人差し指押しスタイルと選択ができるが、親指押しスタイルをすると手の形がフェンシングのグリップに近い形となり、左右に振りやすいが上下には動かしづらい手首の角度となる。人差し指押しスタイルはヘラブナ釣りの竿の握りに近く、こちらは上下運動の可動域が広いが、左右の振り幅は狭くなる。テーブルに置かれた高低差が少ないポテチを取るためには親指押しスタイル、ひしめき合った人間達の隙間からポテチを取るには人差し指スタイル、と戦況にあった選択が必要だ。

 

 

人差し指押しスタイルは『ポテチの手』との一体感を感じさせる洗練されたフォームとなる

 

 

 『ポテチの手』は平たいポテトチップスのみならず、比較的強めの握力を利用して重心のとらえにくい細長いスナック菓子もつまむことができる。義指には互い違いに小さな突起が設置されており、それがやや厚みのあるスナック菓子をかっちりと噛み込むように機能し、安定してつまむことができる。

 

 

カルビー『かっぱえびせん』のスマートな形状も、大丈夫だ

 

コイケヤ『スコーン』のでこぼことした形状も、問題ない

 

通常のスナック菓子に比べて柔らかめのマクドナルド『マックフライポテト』もホールドできる

 

 

 『ポテチの手』に対して『ポップコーンの手』は、対象のお菓子に親指を潜り込ませる必要がないように義指が横軸に作動して対象物を挟み込むように機能する。それにより、丸みを帯びた形状だったり、厚みがあって『ポテチの手』では挟めないスナック菓子もつまむことができる。ただし、やや厚みのあるスナック菓子を対象としているので握力は弱めに設定したあり、義指の突起も互い違いではなく尖がった突起が爪のように設置してある。

 

 

ポップコーンのランダム性のある不揃いな形でも噛み込むようにつまめる

 

コンビニ100円スナックの定番である染み込みチョコ系のように

大きめのスナックもバランス取りが難しいがキープできる

 

明治製菓『たけのこの里』クラスのスナック菓子になると難易度はぐっと上がってくる

 

最高難度のバタピー。義指の鋭い突起がかっちり噛んでいるのがよくわかる

 

 

 

ポテトチップスを食べる手続きの複雑化

 ゲームで遊んでいてステージクリア後のちょっとした合間に、すぐそばにあるポテトチップスに手を伸ばし、つまんで、食べて、おしぼりで手を拭って、ゲームを再開する。ゲーム中にポテトチップスを食べるにはただそうするだけでいいのに、わざわざ『ポテチの手』を介してポテトチップスを口に運ぶまでの手続きを増やす必要があるのか。

 

 シューティングゲームをプレイ中。画面を埋め尽くす激しい弾幕を紙一重に潜り抜け、これ以上ない完璧なタイミングでボムを放ち、大胆に至近距離から連射を食らわせて、圧倒的戦力差のステージボスをたった一機で倒す。次のステージが始まるまでの一瞬の休憩時間に『ポテチの手』を取り、狙いやすいポテチを目視で捕捉し、親指押しか人差し指押しか瞬時に判断し、『ポテチの手』対象物破損防止クラッチ機構発動させ、ポテトチップスを口に運び、擬似指先クリーニング機構を起動させて指をフリフリし、指先机上非接触機構を利用して『ポテチの手』を置く。

 

 これら手続きの複雑化によってもたらされるものは行為の難易度上昇だ。そして難易度が上昇すれば挑戦中に分泌されるアドレナリンの量は増加し、クリア時には難易度に比例して高い達成感と快楽を得られる。シンプルなシューティングゲームの『スペースインベーダー』や『ギャラクシアン』の敵をひたすら撃つというシステムを複雑化させた『ゼビウス』で僕達は高度なシューティングテクニックの高揚感を味わい、パズルゲームのようなシューティングゲーム複雑化の極みとも言える『斑鳩』で快楽をむさぼったのだ。

 

 『ポテチの手』はポテトチップスを指でつまんで食べると言う行為を、まるでゲームを楽しむように手続きを複雑化させたポテトチップスを食べる進化系と言えよう。

 

 Wiiをはじめとして、プレイステーションムーブやXBOX360キネクトと、最近になって各ハードで実際に身体を動かして楽しむスポーツをわざわざ画面上に再現し、リモコンや身体の動きで追体験するゲームがある。最初はこれがなかなか思い通りに動かなく、それがもどかしくも面白味に直結している。ゲームに慣れてくれば現実の身体ではできないスーパープレイも画面の中で繰り出せるようになる。それはもはや追体験を越えて疑似体験となる。

 

 それらと同じで『ポテチの手』を使うという行為は、ポテトチップスをつまむという行動を一歩引いた目線で俯瞰して眺めるように、わざわざ手の形を模倣したギミック満載のマニュピレータを使って擬似体験しているようなものだ。

 

 同じようにポテトチップスをつまむ専用の小型トングが存在したり、日本人なら箸を取れ、と言う意見もあるだろうが、ちょっとした遊び心が物事の本質を変化させることなく付加価値をもたせることができるのだ。

 

 リモコンや身体の動きで画面上のキャラクターを操作してスポーツゲームをプレイすることは、確かに実際にスポーツを楽しむこととはまったく別次元の事柄となる。しかしそこにある事象の本質は変わらない。ボールを追い、あるいはボールを打ち、対戦者と競い合う本質は変わらないのだ。

 

 本質の不変。遊び心のギミック。手続きの複雑化と疑似体験性。『ポテチの手』は、まさにポテトチップスをつまむというシンプルな行為のゲーム化をもたらすアイテムである。

 

 

 年の瀬を迎え、これからクリスマスや忘年会、年を越せばお正月、新年会など人が集まるパーティーや家呑みの機会は増えるだろう。ゲーマーが集まればレトロゲーム対戦祭りは必至だ。その時にさりげなく『ポテチの手』や『ポップコーンの手』を用意しておけば、対戦ゲームの順番待ちでもポテトチップスをつまむゲームも楽しめるはずだ。

 

 クリスマスパーティーなんて興味ないという孤高の人にも。

 

「はい、あーん」

「ぱくっ」

「キャッ、指まで食べないでよ!」

「あはは、ゴメンゴメン!」

 

 と、一人遊びして寂しさを増幅させるもよし。

 ぜひ、ゲーマーならば一度は体験して欲しいアイテムだ。

 

 

 

 

(文・写真=鳥辺野九)

 


 

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