また、ブラウン管テレビのガラスの最大の問題は、他の用途に転用しにくいことだ。かつてはこのガラスを砕き、再びブラウン管として再利用できたが、液晶テレビやプラズマテレビが主流となった現在、ブラウン管の需要は激減。国内で再利用されることはほとんどなくなった。ごく一部は海外に輸出して再利用されているが、いつまで続くかわからない状況だという。
前出の電子情報技術産業協会は、ブラウン管テレビの'10年の廃棄数を1380万台、'11年は1177万台にのぼると推測している。このまま行政がブラウン管テレビの不法投棄に対し、何の対策も講じなければ、今年7月の地デジ化完全移行前後に爆発的に増えてしまい、「今後、不法投棄台数は数十万台の単位で膨れ上がってもおかしくない」(前出・肴倉氏)というのだ。
NHKは解約手続きが必要
さまざまな方面に迷惑を撒き散らす地デジ。それを免れるために、いっそ7月を機に、「テレビのない生活に変える」という選択をする人もいるかもしれない。しかし、ここでも迷惑なことが付きまとう。「NHKの受信料契約」をめぐる手続きや煩わしさが存在するのだ。
7月24日、アナログ放送が終わると、所有するテレビでは放送を受信できなくなる。もし、地デジ対応テレビに買い換えたり、デジタルチューナーを設置したりする意思がないとしたら、忘れずにNHKの解約手続きをしたほうがいい。
自宅のテレビが無用の長物になったからといって、NHKのほうから確認をしに来ることはない。だからこそ、ちゃんと契約解除をしなければ、受信料を口座振替にしている場合、引き落としは永久に続いてしまうのだ。
解約手続きをするには、まず電話による問い合わせの窓口である「NHKふれあいセンター」に電話をして、必要書類を送付してもらう。その後、自宅に「廃止届」(解約申込書)が到着したら、「地デジ対応テレビを持っていない」などと理由を記入した上で、返送。それで、解約は完了となる。
ただし、ここでも注意が必要だ。もしあなたが自宅に地デジ対応テレビを一台も所有していなくても、あなたや同一生計を営む家族が地デジが見られる携帯電話やカーナビを持っているとしたら、NHKと受信料契約を結ばなくてはならないからだ。
仮に携帯電話やカーナビのテレビを普段、ほとんど利用しないとしても、それは理由にならない。
「見る、見ないではなく、その機械に地デジが受信できる設備が備わっているかどうかに関わってくるため、受信料の契約が必要になります。
最近、ワンセグ携帯だけしか持っていない若い方が増えてきていますので、NHKの地域スタッフは新規のご契約をいただくために各家庭を回っているんです」(NHKふれあいセンター)
受信料(2ヵ月払い)は、普通のテレビと同じ2690円。特に携帯電話は画面が小さいだけに、ずいぶん損をした気にさせられるが……。
「小さい、大きいということではないんです。テレビにも大きいサイズと小さいサイズがあるように、さまざまなテレビをお持ちの方がいらっしゃいますので、皆様に公平に受信料をご負担いただいております」(NHKふれあいセンター)
1月24日には地デジ「半年前計画」を発表する予定の総務省。ここまで来た以上、メンツに懸けても強行突破するつもりだ。総務省内には、完全地デジ化の延期を議論する雰囲気はまったくないという。
いったい、何のための、誰のための地デジなのか、多くの国民はいまだわからない。テレビ業界生き残りの陰謀、インチキの臭いがぷんぷんとする。
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