「買い替えの候補として、後付けのポータブルタイプの小さなカーナビを選ぶ方が増えています。持ち運びができて工事費もいらない。オープン価格で出しているのですが、実勢価格は6万~7万円程度です」(三洋電機広報部)
所有するアナログテレビをすべて地デジ化するつもりなら、相当の出費を覚悟しなければならない。
テレビの不法投棄が続出
金銭的な負担を強いられるのは個人ばかりではない。財団法人家電製品協会の試算によれば、全国のホテル・旅館には168万台、病院には136万台、介護・老人施設には36万8000台ものテレビが設置されているという。こうした事業者もまた、地デジ化に際して多額の費用を捻出しなければならない。
とりわけ、テレビ設置台数の多いホテル・旅館業界の状況は深刻だ。
62軒が加盟する熱海温泉ホテル旅館協同組合の専務理事・土屋基氏が次のように明かす。
「小規模な20部屋程度の旅館でしたら配線工事費用が50万~60万円、テレビの買い替え費用は150万円ほどで済みます。ところが、100部屋以上の大型宿泊施設は本当に大変です。配線工事だけで1000万円を超えるのはザラ。全部のテレビを買い換える費用を上回ってしまうケースもあります」
できるだけ負担を減らすため、テレビを買い換えるのは平日も埋まる人気のある部屋だけに限り、土曜しか客が入らないような部屋は1台5000円程度のデジタルチューナーを付けて対応するところもあるという。
「帝国ホテルやホテルオークラなど、有名どころが名を連ねる日本ホテル協会に加盟するホテルでは、すでに9割以上が地デジ化を済ませているようです。しかし、宿泊施設全体で見ると、現在はまだ3割程度しか移行できていないと見られています」(宿泊業界関係者)
全国に直営・フランチャイズを合わせて約7900室を抱えるワシントンホテルグループの場合、「地デジ化のために総額で億単位の予算をかけた」(藤田観光プロパティ部)というのだから、想像を絶する。不景気で宿泊客が減り、資金繰りに苦しむホテルにとっては迷惑どころか、「地デジへの移行はまさに死活問題」(全日本シティホテル連盟専務理事・中山智雄氏)なのである。
そんな中、地デジ化をきっかけに別の懸念も浮上している。'09年度、家電4品目(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機・乾燥機)の不法投棄台数は約13万3000台だったが、このうち約65%を占めるのが、ほかでもないブラウン管テレビなのである。
しかも、買い替え需要が影響し、前年度比で17%も増加している。そのブラウン管テレビに含まれる鉛が自然環境に与える影響が大きく、土壌汚染を引き起こす可能性があるというのだ。
「ブラウン管テレビのガラスや、基板に使われているハンダには、鉛が含まれています。雨水に溶け出した鉛が地盤に浸透すると土壌汚染が起こる。周辺で地下水を飲料などに利用している人は、健康被害に対して十分注意しなければなりません」(国立環境研究所の循環型社会・廃棄物研究センター主任研究員の肴倉宏史氏)
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