口蹄疫:進歩なき防疫対策(上)

 今回の口蹄疫(こうてい)感染拡大問題で、農林水産食品部などの担当部処(省庁)は、感染が確認されてから最初の五日間に行うべき対応を怠った。さらに、その後も急速に広まるウイルスを抑制することができず、右往左往するばかりだ。

 昨年11月に慶尚北道安東市の農家から最初に感染が疑われるとの通報があったが、当局はこれを詳しく調査することなく、五日間にわたり何の対策も取らずに放置した。その間に口蹄疫ウイルスは安東から京畿道にまで広まり、その後に行われた大規模な殺処分や予防ワクチン接種は、結果的に後追いの対策となった。つまり今回の口蹄疫問題は、初期対応の失敗が最悪の状況を招いた人災というわけだ。そのため、殺処分に伴う補償や消毒費用などに2兆ウォン(約1500億円)以上の税金が投入される結果を招いた。

 26日までに殺処分された家畜の数は、牛14万4249頭、豚257万3319頭など、計272万3811頭に上る。前日の262万5553頭に比べ、9万8258頭も増えた。このままのペースで行けば、旧正月(今年は2月3日)連休前までに殺処分される家畜の数は300万頭を超える見通しだ。

 殺処分に伴い農家に支払われる補償金も、1兆7000億ウォン(約1250億円)を超えるものとみられる。

 今回の口蹄疫問題の初期には、農林水産食品部の劉正福(ユ・ジョンボク)長官を司令塔に消毒などの対策が取られたが、京畿道、慶尚北道、江原道などへの感染防止に失敗したことを受け、昨年12月29日には政府次元で中央災難安全対策本部が発足した。しかし、その後も感染の勢いは衰えていない。

(1)最初の五日間は完全に無防備状態

 今回の口蹄疫は慶尚北道安東市で最初に発生したが、この事実を農林水産食品部国立獣医科学検疫院が正式に把握したのは昨年11月28日だった。ところがその五日前の23日には、慶尚北道家畜衛生試験所にすでに通報されていた。試験所の関係者は簡易検査の結果が陰性だったことを理由に、通報があったことを中央災難安全対策本部に報告しなかった。ところが28日に再び通報があったため検疫院が詳しく調べたところ、29日になって陽性反応が確認された。農林水産食品部は感染の疑いがあるとの通報が入った場合、必ず獣医科学検疫院に詳しい検査を依頼するという規定を定めていたが、現場の自治体がこれに従わなかったというわけだ。その間にウイルスは車や人間を通じて安東全域に広まり、さらに糞尿運搬車によって京畿道坡州市にも感染が広まっていった。

今回の口蹄疫は、昨年11月に慶尚北道安東市で最初に発生し広まったが、政府は初期の対応を怠った。その結果、農家への補償金支払いや消毒、予防ワクチン接種などに総額2兆ウォン以上の予算投入が強いられる見通しとなった。写真は仁川空港を通じて入国した旅行客たちが、口蹄疫の感染拡大のために設置された消毒装置の前で順番待ちをしている様子。/李泰景(イ・テギョン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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