7月24日の完全地デジ化は絶望的 知らないのは大臣だけ…という滑稽
2011/1/27 10:00 片山善博総務相が、21日の閣議後の記者会見で、今年7月24日に予定している地上デジタル放送の完全移行(地上アナログ放送の完全停止)について、「期限の延長は毛頭考えていない」と言い切った。この自信はどこからくるのか? 地デジ未対応の世帯は、今でも200万〜250万世帯。7月までの完全移行には、多くのハードルがあるのである。
片山は会見で、昨年9月末時点の総務省の調査で、地デジの世帯普及率が90%を突破したことを挙げ、「最新データではさらに普及率が上がっている」と力説した。だが、この数字は甘すぎる。放送業界に詳しいジャーナリスト・坂本衛氏がこう言う。
「片山総務相は細かい話を知らないのでしょう。NHK総合企画室やビデオリサーチ社の調査によれば、昨年9月段階の地デジ普及率は70%台前半でした。総務省の数字は大幅に底上げされています。03年12月から地デジ化を始めて、7年かかってようやく70%台ですよ。90%台後半まで普及しているならまだしも、地上アナログ放送の停止はあと2、3年は待つべきです」
地デジ化できていないのは、低所得世帯や高齢世帯が多い。総務省は、そういった世帯を対象に地デジ簡易チューナーをタダで配ることにしたが、申請が集まらず、締め切りを何度も延期したという。情報がきちんと伝わらないのだ。地デジ用のアンテナ設置も必要で、電器店はアンテナ工事に追われている。7月に向け駆け込み申し込みが激増する可能性も高く、そうしたらパンクだ。そんな中、7月にアナログを停止したら、大混乱が起きるのは確実なのだ。
「実は、テレビ局の現場では、7月の完全移行はとてもムリだと思っている人が少なくない。しかし、それを明らかにすると、普及テンポが鈍る恐れがあるので、口に出せないのです」(坂本氏)
そんなことは総務官僚もわかっているはず。知らされていないのは、片山大臣と国民だけだ。
(日刊ゲンダイ2011年1月24日掲載)
片山は会見で、昨年9月末時点の総務省の調査で、地デジの世帯普及率が90%を突破したことを挙げ、「最新データではさらに普及率が上がっている」と力説した。だが、この数字は甘すぎる。放送業界に詳しいジャーナリスト・坂本衛氏がこう言う。
「片山総務相は細かい話を知らないのでしょう。NHK総合企画室やビデオリサーチ社の調査によれば、昨年9月段階の地デジ普及率は70%台前半でした。総務省の数字は大幅に底上げされています。03年12月から地デジ化を始めて、7年かかってようやく70%台ですよ。90%台後半まで普及しているならまだしも、地上アナログ放送の停止はあと2、3年は待つべきです」
地デジ化できていないのは、低所得世帯や高齢世帯が多い。総務省は、そういった世帯を対象に地デジ簡易チューナーをタダで配ることにしたが、申請が集まらず、締め切りを何度も延期したという。情報がきちんと伝わらないのだ。地デジ用のアンテナ設置も必要で、電器店はアンテナ工事に追われている。7月に向け駆け込み申し込みが激増する可能性も高く、そうしたらパンクだ。そんな中、7月にアナログを停止したら、大混乱が起きるのは確実なのだ。
「実は、テレビ局の現場では、7月の完全移行はとてもムリだと思っている人が少なくない。しかし、それを明らかにすると、普及テンポが鈍る恐れがあるので、口に出せないのです」(坂本氏)
そんなことは総務官僚もわかっているはず。知らされていないのは、片山大臣と国民だけだ。
(日刊ゲンダイ2011年1月24日掲載)
2011/1/27 10:00 更新