今年4月から、小学校で新しい学習指導要領が全面実施になるのを控えて、土曜日の授業実施に踏み切る自治体が出てきました。東京都教育委員会が、土曜授業の実施を実質的に認めたということは、以前にお伝えしましたが、これに追随する格好です。今後、土曜授業を取り入れる自治体が、さらに増えることが予想されます。
学力向上を目指した新指導要領では、小・中学校の授業時間数が現在よりも増えるため、公立学校関係者の間では、土曜授業の実施を求める声も少なくありません。このようななかで、東京都教委は2010(平成22)年1月、授業公開など地域住民や保護者に向けた「開かれた学校づくり」の一環という条件付きで、月2回まで土曜授業を認めることを通知しました。都内では現在、ほとんどの公立小・中学校が何らかの形で土曜授業を実施しているほか、葛飾区教委などは2011(平成23)年度から全部の区立学校で、月1回の土曜授業を実施することを決めています。
東京都が土曜授業を条件付きながら容認した当初、これに続く自治体がすぐ現れると予想されましたが、実際には、東京都に追随する動きは見られませんでした。ところが昨年秋ごろから、実施を検討すると表明する自治体が出始めました。
まず、栃木県足利市教委が、他学区からも生徒を入れる「特認校」の指定を受けた市立中学校3校で、2011(平成23)年度から月2回の土曜授業を行う方針を発表しました。また、宇都宮市教委は、中学校で新指導要領が始まる2012(平成24)年度までに、市立小・中学校の全校に土曜授業を導入する方針を固め、現在、具体的内容の検討を進めています。
これら自治体の動きを受けて、栃木県教委も、公立学校の土曜授業について指針をまとめることにしました。県教委の指針が策定されれば、同県内で土曜授業を実施する自治体が増えることは確実でしょう。
このほか、埼玉県などでも一部の自治体が、2011(平成23)年度や2012(同24)年度からの土曜授業の実施を検討していることが、マスコミなどで報道されています。
ところで、なぜ東京都の動きから少し時間を置いて、土曜授業の検討を表明する自治体が出てきたのでしょうか。理由のひとつは、小学校の新指導要領に向けた具体的なカリキュラム編成が本格化し、平日だけでは授業時間数の確保が難しいことがだんだん明らかになってきたことでしょう。
昨年夏の猛暑も、理由のひとつに挙げられるかもしれません。多くの教育委員会では、授業時間数の増加に対応するため、夏休みなどを短縮することを検討しています。しかし、猛暑の中で授業を行うのはやっぱり不可能だと感じた教委や学校も少なくないでしょう。
今後、2012(平成24)年度の中学校の新指導要領実施に向けた具体的なカリキュラム編成が進むにつれ、土曜日授業へと動きだす自治体が、どれだけ出てくるかが注目されます。そして、今年の夏の天候も……。
1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。
日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。
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