今年4月から小学校で本格実施となる新しい学習指導要領では、「PISA型学力」の育成を目指していることは、先日の記事で紹介しました。そのPISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)の2009(平成21)年調査の結果についての発表資料で、注目すべき部分があります。いわゆる「できる子」と「できない子」の、格差の問題です。
OECDでは各調査分野について、解答した生徒を得点別に6〜7段階の「習熟度レベル」に分け、それぞれがどのくらいの割合かを算出しています。「読解力」の分野は今回、2000(平成12)年調査の水準まで回復したと言われていますが、習熟度レベルで見ても、ずっと横ばいだった「レベル5以上」の成績高位層が跳ね上がり、これに次ぐ「レベル4」も減少の一途から、増加に転じました。逆に「レベル1未満」「レベル1」「レベル2」の下位層は、減少しています。つまり、「できる子」が増え、「できない子」が減少したから、平均も上がったというわけです。
では、「数学的リテラシー」の分野はどうかというと、「レベル5」「レベル6」の上位層は前回に比べ少し増えましたが、「レベル1未満」「レベル1」の下位層は、横ばいか微減になっています。つまり、全体的には成績が上がったものの、「できない子」をあまり減らせなかったということになります。数学的リテラシーは、国際的には依然として上位グループより下で低迷しているとされていますから、もっと「できない子」を減らすことに力を入れる必要があることを示しています。
一方、上位グループを維持している「科学的リテラシー」の分野を見ると、「レベル2」や「レベル1」の下位層は減っており、逆に「レベル4」や「レベル5」も増えたのですが、最もよくできる「レベル6」は、依然として少数です。「できない子」をできるようにすることは成功しつつあるのですから、今後は「できる子」をどう伸ばすかを考えなければなりません。
以上のことは、過去のデータと比較してわかった課題ですが、習熟度の国際比較を見ても、日本がまだまだ、できる子を伸ばし、できない子を減らす余地があることがわかります。成績が回復したはずの読解力では、「レベル1b未満」「レベル1b」という下位層の割合が、上位10か国・地域中で、最も多くなっています。数学的リテラシーや科学的リテラシーでも、「レベル5」や「レベル6」の上位層が、それほど多いわけではありません。
学力の現状をめぐっては、全体的な低下傾向はもとより、できる子とできない子の学力格差が広がる「二極化」現象が指摘されています。そこで新指導要領では、改めて「確かな学力」の必要性を強調するとともに、反復学習を取り入れることで、確実な知識の習得を目指しています。そうした方針の下、子どもたちの学力格差を縮め、全体的なレベルアップを図るような授業を、学校にはいっそう期待したいものです。
1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
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娘の学校では「教え合い」を実施しています。
早く問題をこなした生徒が、グループ内の分からない生徒に「教える」のです。
「教える」側も「教えられる」側も、高学年ともなると確定されています。
親の世代もやっていたことなので、ここまでは普通だと思っていましたが、
「でもね、教える気がなくなるような子もいるよ」
「どんな子?」
「考えもしないで、『次の答えは?』って言う子」
“出来るまで時間が掛かる子”は居ました。けれど、“やらない、やろうとしない子”は…。
格差は、ここに現れていると思います。
チーム・ティーチング等進んでいる学校もありますが、自治体によっても差があります。
個人的には、理解度別を設けたほうが良いのかも、と思います。
居残り学習も。ありましたよね、親の時代には。
何よりも、ゲーム・テレビに子守をさせて、成績が上がらないのを学校の責任にするのは大問題です。
今の時代、本当に成績の2極化ですよ。
中学校のテストの成績のグラフをみると一目瞭然です。
上の方が書いているように、今の親御さんは子供の勉強すら見ない方がいて、できないのは、学校のせい、かといって居残りはだめ(上の子の時は漢字テストなどでありました)、ならいごとがあるから?
上の子の時に比べ親の質自体落ちたことを本当に実感することが多いです。