|
きょうの社説 2011年1月27日
◎家畜伝染病 韓国経由にも警戒が必要
宮崎県の養鶏場で鳥インフルエンザが発生し、鹿児島県に続いて愛知県にまで感染が拡
大した可能性が出てきた。宮崎県で検出された強毒性のH5N1型ウイルスは昨年秋、高岡市で感染が確認されたコブハクチョウのものに酷似しているという。大陸から日本海を飛来してきた渡り鳥が、ウイルスを持ち込んだとする説が有力であり、いつ北陸に飛び火してもおかしくない。危険な家畜伝染病は、鳥インフルエンザにとどまらない。韓国では鳥インフルエンザに 加えて、昨年、宮崎県を襲った口蹄疫が今、猛威を振るっている。発生から2か月でほぼ全土に拡大し、牛と豚計272万頭以上が処分された。宮崎県で殺処分された牛と豚が約28万頭だったから、実に10倍近い被害である。 ソウル便が就航している小松空港や富山空港では今月から帰国者の靴底消毒を徹底する など、検疫強化に乗り出した。ウイルスは地面に落ちた後、靴の裏に付着して移動することが多いため、入国者が踏むマットに散布する消毒液を増やしたのである。宮崎県の口蹄疫対策検証委員会は最終報告書で、ウイルスを国内に入れない水際対策の重要性を指摘している。北陸から気軽に行ける人気の観光地で、深刻な被害が出ている事実を知っておきたい。 また、詳しい被害状況が分からないが、口蹄疫や鳥インフルエンザは、中国でも発生し ているとみられる。韓国や中国では、養鶏場や養豚場などに安易に近づかないようにしたい。中国の農村部や市場などでは生きた家畜や鳥を数多く見かける。こういった場所にも注意が必要だ。 鳥インフルエンザの予防は、ウイルスを運ぶ野鳥と接触させないのが基本である。島根 県のケースでは当初、鶏舎を覆う防鳥ネットに不備はないとされていたが、その後の調査で国の定めた基準より網目が広く、小鳥の出入りが可能な部分が見つかった。 石川県は先月、100羽以上を養鶏する42カ所を対象に緊急の立ち入り検査を実施し 、安全を確認したが、雪などにより、ネットにすき間や破れができていないか再度点検してほしい。
◎農林研究機関の統合 成果が一段と求められる
石川県の新しい行財政改革大綱の原案に、農業総合研究センター、畜産総合センター、
林業試験場の3試験研究機関を統合する方針が盛り込まれた。実施は2012年度の予定で、再編による組織全体のスリム化や業務の効率化はもとより、より成果の出せる研究機関に能力アップを図ることが望まれる。国、自治体の行財政改革で公設研究機関の統廃合も進んでいる。自治体の農林水産系研 究機関の再編では富山県が一歩先んじており、08年度に農業技術センター、林業技術センター、食品研究所、さらに水産試験場の4機関を統合して「富山県農林水産総合技術センター」を発足させている。 公設から独立行政法人への移行も改革の一筋の流れであり、最近の例では、青森県が農 林水産系と工業系の研究機関を統合した上で、独立行政法人化している。 いずれも、研究機関の連携を強化し、「総合力」を高めて成果を挙げることを大きな狙 いにしている。農林水産業をとりまく情勢は変化しており、農商工連携による新たな地域産業の創出といった時代の要請にこたえるためにも、これまで以上に「成果重視型」の研究機関になることが求められているのである。 現在の農業総合研究センターの活動では、14年の歳月をかけて開発したブドウの新品 種「ルビーロマン」がよく知られる。最近の研究発表では、里山の地域振興に資するサカキやワラビの増殖技術に関する報告がなされているが、産業化、商品化に結びつく研究成果を期待したい。 そのためには、研究の終了に伴って行われる外部評価委員会による第三者評価を、さら に厳正に行うことも大事である。 また、現研究機関の活動は「県農林水産試験研究推進構想」に基づいて進められている 。同構想は農林水産研究の指針になるもので、研究の基本方向や目標、今後開発すべき石川の新しい技術項目、技術移転の方策などがまとめられているが、策定されたのは02年度であり、内容の検証と見直しを行う必要もあろう。
|