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社説:代表質問 「解散」とはまだ早すぎる

 いずれ、その時が来るかもしれないが、国会冒頭からとはいささか勇み足ではないのか。

 国会は26日、衆院本会議で菅直人首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まった。自民党の谷垣禎一総裁は、菅首相が呼びかける税と社会保障の一体改革のための与野党協議について、民主党マニフェストの撤回だけでなく衆院の解散・総選挙を協議参加の前提条件にしたい、との構えを明らかにした。

 谷垣氏はその理由として、一体改革は民主党マニフェストとは根本的に相いれずそのけじめとして改めて国民の信を問うべきだと力説した。

 これに対して菅首相は、当面は国民生活を改善するための予算、関連法案成立に全力を傾注、解散は一切考えていない、としたうえで、総選挙で国民の信を問うのは「消費税を引き上げる時、またはそれに匹敵する税制改革をする場合」と述べた。

 菅首相は、一体改革の段取りについて、(1)全世代対応、未来投資、雇用促進、安定財源確保などいわゆる5原則に沿って4月までにあるべき社会保障制度の方向性を決める(2)6月までにその具体的な制度設計と消費税を含めた税制抜本改革の基本方針を示す(3)成案を作る過程で野党側の意見も求めたい--との考えを示し、与謝野馨経済財政担当相がその際には政治が自ら身を切る覚悟を示し、行政の無駄を徹底的に省くことが肝要、と補足した。

 さて、双方の姿勢が明確になった。消費税率引き上げを含めた一体改革の実現に当たっては解散・総選挙で国民の信を問う必要がある、との認識が一致点だ。これは理解できる。ただ、解散を約束しなければ与野党協議に乗れない、とも受け取れる谷垣氏の主張はいかがなものか。解散権が首相の専権事項であることは、長く政権を担当してきた自民党が最もよく理解するところだろう。しかも、首相は解散の時期を明示した。谷垣氏が強調するように一体改革議論で自民党案の方が先行しているのであれば、なぜ協議の場に出し惜しみするのか。よりよい案として切磋琢磨(せっさたくま)される方が国民の利益になるのは明らかだ。協議を入り口から拒むことなかれ、と改めて要望したい。

 自民党の知恵をいただきたい、と民主党ももっと腰を低くしたらどうか。菅首相は答弁で「これまでの姿勢で反省すべきは反省する」と言うが、もっと態度で示すことだ。

 小沢一郎・民主党元代表の問題も俎上(そじょう)に上った。小沢氏が政治倫理審査会での説明に応じていないことについて首相はあくまでも国会での説明の場が必要だと明言した。その経過も見守りたい。熟議をどう実現するのか。国民もそれを見ている。

毎日新聞 2011年1月27日 2時31分

 

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