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【レポート】

JAXA、IKAROSの定常運用を終了し2012年3月までの予定で後期運用に移行

1 世界初の各種実証に成功した「IKAROS」

2011/01/27

小林行雄

    2010年末で予定通りIKAROSの定常運用が終了

    宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月26日、2010年5月21日に打ち上げを行った小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の定常運用を2010年末で終了し、2012年3月末ころまでを予定とした後期運用へ移行したことを発表した。

    左からJAXA 月・惑星探査プログラムグループ IKAROSデモンストレーションチーム チームリーダの森治氏、JAXA 月・惑星探査プログラムグループ IKAROSデモンストレーションチーム チームサブリーダである津田雄一氏、JAXA 月・惑星探査プログラムグループ IKAROデモンストレーションチーム オプション機器アラジン担当の矢野創氏、JAXA 月・惑星探査プログラムグループ IKAROデモンストレーションチーム オプション機器アラジン担当の矢野創氏

    IKAROSは定常運用期間中に以下の4つのミッションが設定されていた。

    1. 大型膜面の展開・展張
    2. 電力セイルによる発電
    3. ソーラーセイルによる加速実証
    4. ソーラーセイルによる航行技術の獲得

    この内前半の2つは「ミニマムサクセス」と呼ばれる第1段階。"1"については、6月2〜9日にかけて膜の展開を実施、分離カメラによる展張状態の確認ができ、かつ膜面に異常が見られなかったことから、展開・展張については「完了」となった。

    IKAROSのミッションの定義と、それぞれの要求に対する確認結果(提供:JAXA)

    また、スピン展開の挙動についてもスピンレートなどの実データと、地上でのシミュレーションデータの照らし合わせを行うことで、おおむね一致することを確認し、異なる部分についても調査を行い、原因の解明を行うなどの成果を「達成」したとする。

    IKAROSの膜面展開・展張における姿勢データ(提供:JAXA)

    ちなみに、この"完了"と"達成"の違いは、完了はミッション要求を完全に満たしているときに用い、達成はミッション要求を一通り満たしており、後期運用にてさらに実証を進めることで、さらに成果が期待できる場合というような用語の使い分け方となっている。

    各ミッション要求に対する確認結果(提供:JAXA)

    "2"については、6月10日に薄膜太陽電池の発電実証を実施。特性評価を週1回程度実施した結果、そのI-V特性は地上での予測試験とほぼ一致することが確認され、ミッションは「達成」となり、これによりミニマムサクセスを達成したこととなる。

    薄膜太陽電池による発電の実験。この太陽電池による発電は、それができるかどうかの確認のためのもので、発電された電力がIKAROSの何かの機器を動かすために用いられるということはない(提供:JAXA)

    "3"の加速実証と"4"の航行技術の獲得については、「フルサクセス」と呼ばれる第2段階で、約6カ月の運用を終えた時点での評価となった。

    加速実証は、膜面展開後に光子加速を確認しており、ドップラー履歴のデータからは、それぞれの地点での太陽から受ける光圧とほぼ一致しており、その結果、2010年12月末までに累積光圧加速量はほぼ予定していたとおりの100m/sへと到達して「完了」となった。

    IKAROSの加速実証。地上での予測どおりの推力を達成している(提供:JAXA)

    そして航行技術の獲得は、膜の向きを変えて軌道を制御しようというもの。軌道制御の方法はいくつもあるが、今回は液晶デバイスの動作チェック。その結果、姿勢制御実験により、想定どおりの制御性能を発揮していることを確認し、12月8日には金星に最接近し、フライバイを行い、その際に金星を撮影することにも成功している。

    なお、同じく5月21日に打ち上げられた金星探査機「あかつき」は、1日早い12月7日に金星に到着しており、その1日のずれは「膜(帆)によりもたらされた減速によるもの」(JAXA 月・惑星探査プログラムグループ IKAROSデモンストレーションチーム チームリーダの森治氏)とするほか、「あかつきの軌道は金星の内側(太陽側)だが、IKAROSは金星の外側(夜側)に誘導しており、それも軌道制御の成果」(同)とする。

    液晶デバイスによる姿勢制御が可能なことを確認(提供:JAXA)

    金星よりおよそ8万kmの距離でフライバイした際に撮影された金星の画像(提供:JAXA)


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