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ばってん日記:白鵬に聞いたこと /熊本

 大相撲初場所で白鵬が優勝した。年末に仕事で白鵬に初めて会ったのでその横顔を紹介したい。

 第一印象は「日本人以上に、良き日本人らしくありたい」と願う青年である。この日本人とは、現代日本人ではなく、昔風の日本人のことだ。

 その強さの秘密を尋ねると「親方に教えられた伝統的な稽古(けいこ)が正しかったからだと思います」と白鵬は答えた。この稽古とは「四股(しこ)」「鉄砲」「すり足」の三つである。

 今、多くの上位力士の人気を集めるのが欧米式のウエートトレーニングだそうだ。肉体の機能を分解して考え、特定の筋肉を集中的に強化する。

 一方、四股は手を足に添えて、片足を交互に上げ下げするだけの稽古だ。一見、簡単そうだが、とんでもない。自分でやってみればすぐ分かる。

 体重約150キロの白鵬は、両足で75キロずつを支えている。それが四股の時は150キロの全体重が片足にかかる。150キロ同士の力士が対戦すれば合計300キロに達する。それを支える脚力をつけるのが四股なのである。

 鉄砲は柱相手の突っ張りで、腕力を鍛える。すり足は足裏を土俵から離さず、重心を低く保ったまま移動する稽古。いずれも相撲の長い歴史から編み出された。「柔軟な筋肉をつけるには伝統的稽古をする以外にない」と白鵬は言う。欧米式の筋トレだと、力はついても筋肉が硬くなる。押された時、バネがないため腰が残れず、もろい。

 「日本人力士が欧米式に流れ、他国から来た自分が日本伝統の稽古に打ち込んでいるのです」と白鵬は苦笑した。「相撲は神事で、スポーツではありません。土俵は神の降りる庭で、その頂点にいる横綱は五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願い、悪霊を踏みつぶす神聖な存在です。だからガッツポーズなど、してはならないのです」と熱く語る白鵬。これまで強すぎるモンゴル人力士に好感が持てなかった私だが魅了されてしまった。<熊本支局長・大島透>

毎日新聞 2011年1月24日 地方版

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