河北春秋
ある日突然、見知らぬ人に襲われる。性暴力被害はそんな通り魔犯罪のイメージが強いかもしれない。けれども、加害者の8割近くは顔見知りだ。成人女性を対象にした内閣府調査が示している▼子どもの性虐待、児童ポルノ被害も同じだ。ドメスティックバイオレンス(DV)家庭に育った子どもの6%が性虐待に遭い、加害者の97%が父親や親族という調査結果がある
▼自分が何をされたのか理解できないほど幼い子が、安全なはずの家庭の中で繰り返し被害を受ける。「もっと早く、誰かが教えてくれたなら」「話を聞いてほしかった」。子ども時代を振り返って訴える声が痛ましい▼警察に届けられる性暴力被害は1割程度。どこにも相談できずにいる人がほとんどだと、支援に携わる人たちは言う。近しい関係の中で起きる犯罪。潜在化する被害。それが性暴力の実像だ
▼宮城県が性犯罪前歴者・DV加害者の監視強化などを盛り込んだ条例作りの検討を始めた。被害の実態と重ねれば、その効果には疑問が湧く。行き過ぎた監視社会を生みかねない危うさを慎重に吟味したい▼被害者支援の現場からはこんな声が聞こえる。「今何より必要な対策は幼いころからの防止教育と、被害を訴えやすい総合支援センターの設置」。急いでやるべきことはたくさんある。
2011年01月27日木曜日
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