2011年度から小学校で5、6年生での英語教育が制度化される。それだけではない。家庭訪問を行わない学校や、教室に教壇がない学校が増えているという。現在の小中学校は記憶の中のそれとは全く違った世界になっている? 今回の○○を斬る!は、お父さんお母さん世代に捧ぐ、小中学校の移り変わりを特集した。
小中学校の現場には様々な変化が起こっていた
コミュニケーションは高度に情報化され、世の中のスピードは加速するばかりで、仕事や人付き合いに忙殺される現代人。ふと立ち止まって見ると、数年前の記憶どころか、数週間前の記憶すらおぼろげ、という人も多いのではないだろうか。しかし、小学生や中学生だった時代、無邪気に虫を追いかけたり、担任の先生のゲンコツをおっかながったりしていた時代の記憶は、不思議と鮮明に思い出されるものだ。
ランドセル、給食、緑のおばさん、家庭訪問、卒業式で歌う仰げば尊し……。全てが甘酸っぱく、そしてかけがえのない、決して戻ることのない記憶の中の宝物。しかし最近の小中学校のそれらは、記憶の中のそれらとは違ってきているというのだ。
近年では、ランドセルを使わない児童が増えているという。家庭訪問や授業参観を行わない学校が増えているという。給食は流行を取り入れ、20年、30年前のメニューとは一線を画すものになっているという。これらの噂を検証するため、最新の小中学校事情を取材した。
「君」と呼ばない小学校教育
授業中に教師が生徒に、教科書の何ページから何ページまで読むように指示をする。そんな時、あなたはなんと呼ばれただろう。男性なら○○君、女性なら○○さんと呼ばれることが多かったのではないだろうか。しかし最近の学校では、その限りではないという。茨城県のある公立小学校の教員は語る。
この風潮は、ジェンダーフリーの意識の高まりに影響されてのこと。公的な場所で、男性と女性の扱いを性差によって変えるということが適切ではない、という理屈だ。東京都の教育委員会に話を聞くと、「生徒を呼ぶ際に、呼び捨てはしないようにと呼びかけていますが、『さん』で統一するような取り決めはしていません」と語る。各学校や教員の個人レベルでの意識の変化のようだ。男子は「君」、女子は「さん」で育った世代から見れば、少し違和感があるが、当事者の小学生達は自然なこととして受け入れているという。
ランドセルを使わない児童が増えている?
年末年始のタイガーマスク・伊達直人騒動でも注目を集めたランドセル。しかし、近年は卒業までの6年間ランドセルを使わない小学生も増えてきているそうだ。小学3年生くらいの段階で、リュックサックやショルダーバックに持ち替えるという。理由は様々だ。高学年になるにつれ、お洒落に目覚め、デザイン的に嫌がる子どもがいるという。また学校のカリキュラムによっては教科書や教材が多く、ランドセルの収納性では間に合わないという理由もある。最近の子どもの発育は著しく、体に合わないという側面もあるようだ。
東京都の教育委員会によると「学校への登校にはなるべくランドセルを使用するように呼びかけているが、ランドセルを使うことには法的な取り決めはない」という。
そもそも何故“小学生はランドセル”なのだろう。ランドセルの起源は諸説あり、はっきりとしない。明治時代に乃木希典が発案したという説もあるし、伊藤博文が学習院に入学する大正天皇に贈り、そこから広まったという説もある。調べてみると、全国的にランドセルが背負われるようになったのは昭和30年頃。通学中の安全の確保という面が大きく、背中に背負うランドセルの場合両手が空き、もしも転んだ場合でも、手を付くことができる。それならばリュックサックでも同じだが、ランドセルで統一することで、生徒間の不公平感をなくすという意味合いもあったようだ。
ランドセル離れと少子化は、ランドセルメーカーの経営にどのような影響を与えているのだろう。自社ブランド製品を販売しているイオンに話を聞くと、面白いことが起きていた。内部をほんの少しだけ広くした製品を昨年販売し、年末は例年の2倍ほどの売り上げを記録したというのだ。というのも、従来のランドセルは、A4サイズのものは入るが、A4サイズのプリントなどを収納するクリアファイルは入りづらかった。そのちょっとした改良で、消費者の好評を得たという。少子化の時代でも、こうしたほんの小さな試行錯誤が、活路を開く鍵となるようだ。
今回の取材者1
1学期が終わったら夏休み、2学期の後に冬休みをはさみ、少し短めの3学期を終えた後に春休みで1年が終了する。馴染み深いサイクルだが、3学期制から2学期制に移行する学校が増えているという。その理由とは? 長期休みはどうなってしまうのか? そのメリットとは? 実際に導入している群馬県高崎市の教育委員会に話を聞いた。
問1 2学期制を導入する理由はどのようなものでしょうか?
「2学期制を導入する理由は、平成14年度から実施された週5日制が背景にあります。それまで土曜日に登校する日が月に2回ありましたが、それが休みになるわけですから、授業時間が減りますよね。減った授業時間を補足するためには、2学期制が都合よかったのです。というのも、定期テストの回数や3学期制と比べて始業式や終業式が減りますから、その分を授業時間にあてられるのです。高崎市教育委員会では平成15年から16年まで一部の学校で試験的に実施し、平成17年に全校で実施しました」
2学期制は、4月から10月の中旬までの前期と10月下旬から3月までの後期で分けられる。前期の中程には夏休みが、後期の中程には冬休みがあるが、これらは節目としては扱わない。新たに、10月の中程に1週間ほどの秋休みがあり、前期と後期の節目となっている。
問2 2学期制のメリットとはなんでしょうか?
「ひとつは、学習に連続性を持たせられることです。これまでは夏休み、冬休み、春休みなどの長期休暇を区切りとして、学習内容が3つに分断されていましたが、休みを学習の区切りとしない2学期制ならば、過去に学んだ内容を積み上げつつ、よりゆとりをもって学ぶことができるのです。また3学期制だと各学期の授業日数が少ないので、例えば1学期の通信簿で良い結果が出せなかった生徒が、それを挽回するのが難しい側面がありました。2学期制ならば、学期の中に長期休暇もありますし、学期内の授業日数も長いので、巻き返しが図りやすくなります。通信簿で評価をしてそれでおしまい、ではなく、子どもに自分の成績について考えてもらい、長期的な展望で学力を上げていく教育が可能になるのです」
また、従来の3学期制の場合、教員が1学期の通信簿を作成するのは7月。これは各部活の夏の大会が重なるシーズンであり、非常に多忙になってしまう。また2学期の通信簿を作成する11月も進路指導が本格化するシーズン。こうした忙しい時期に、繊細な判断が必要とされる通信簿の作成をしなくてすむようになり、教員はよりきめこまやかな授業を展開できるようになるという。
「2学期制を導入している学校は2009年の統計で、公立小学校が4,668校で21.8%、公立中学校が2,284校で23%となっています。2学期制は導入されてまだ間もありません。学校の在り方も時代の要求によって変わるものですから、その時その時の世相を慎重に判断して、よりよい制度を導入していきたいと考えていきます」
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そうなの!? 2011/01/26 15:07:18
小学校ってそんなことになってたんだ!なんか細かいこと気にしすぎな気もするけど、どうなんだろう?