千葉県東金市で08年に起きた保育園女児殺害事件で、殺人など3罪に問われた同市の無職、勝木諒被告(23)の公判が20日、千葉地裁(栃木力裁判長)で結審した。軽度の知的障害がある勝木被告の責任能力が最大の争点で、検察側は完全責任能力を主張し懲役20年を求刑、弁護側は心神耗弱を理由に「適切な刑を望む」と訴えつつ「訴訟能力がない」として公判停止を求めた。判決は3月4日。
刑事裁判で利害を認識し自分の権利を守る「訴訟能力」も争点だったが、栃木裁判長は公判を停止せず審理を終えた。検察側は論告で「不利な事実関係の質問では、黙ったり供述を変える場面が多かった。自分の立場はわきまえていた」と指摘。弁護側は最終弁論で「法律の理解力、弁護人に助けを求めるコミュニケーション能力も不十分」と反論した。
論告によると勝木被告は08年9月、「友達になりたい」と考えて保育園児の成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5歳)を路上から自宅に連れ去り、「ばか」と言われて腹を立て殺害、遺体を路上に放置したとされる。
検察側は「短絡的な動機は障害の影響だが、過度に考慮すべきではない」と指摘。「通り魔と同じ防ぎようのない被害。残虐で悪質な犯行」と訴えた。弁護側は「女児に泣かれて対応できず『暴走モード』になった」と殺人罪に関し心神耗弱を主張し「社会的支援もなかった」と訴えた。
遺族側は「責任能力を理由に刑を軽くするのは許されない」と無期懲役を求めた。【中川聡子、駒木智一】
毎日新聞 2011年1月20日 21時22分