経営破綻した元東証2部上場の「春日電機」(旧本社・東京都三鷹市)をめぐる特別背任事件で、警視庁に逮捕された元社長の篠原猛容疑者(53)。米著名投資家と同格の「企業再建屋」と豪語していたが、実像は「単なる乗っ取り屋」(関係者)だった。春日を破綻に追い込みながら敷地面積300平方メートルを超える豪邸に住み、高級外車を複数所有するなど自身はきらびやかな生活を送っていた。
警視庁の調べによると、篠原容疑者は2008年、実質的に経営する産業用機器開発会社「アインテスラ」(中央区)を介して春日株を大量に取得、同年6月の株主総会で社長に就任した。その直後、返済能力がないことを知りながらアイン社に5億円を超える巨額資金を融資した疑いがもたれている。
篠原容疑者は1957年、京都府出身。府立高を卒業後、自衛隊に入隊したが、1年たたずに除隊。串揚げや漬物店を立ち上げるがうまくはいかず、株式投資に乗り出す。その後、投資ファンドの設立などを経て、99年に情報通信会社「オックス情報」(現オックスホールディングス)を創業し、2003年には大証ヘラクレス(現ジャスダック)に上場させた(09年上場廃止)。
相前後して買収の舞台となるアイン社を設立、春日株の買い占めに着手していく。同容疑者に近い関係者がその横顔についてこう語る。
「(米マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツや(米著名投資家の)ウォーレン・バフェットと同格の企業再建屋を公言しながら、春日の創業者一族には『乗っ取られる方が脇が甘い。これからも(他社の乗っ取りを)続ける』と宣言していた。ITバブル期には(元ライブドア社長の)堀江貴文氏に対抗心をむき出しにし、日本証券新聞を競って手にしたこともあった」
敷地面積300平方メートルを超す3階建ての都内の豪邸には、大型サンドバッグが入るトレーニングルームや大人数が収容できるカラオケルームがあったという。「都心部に親族名義で4億円のマンションも持ち、無類の外車好きでも知られ、コレクターと競い合い、全部で13車種のBMWを1台ずつ所有するほど」(先の関係者)だった。
篠原容疑者に乗っ取られ、信用不安で昨年6月に倒産した春日電機。とんだ人物に目を付けられたものだ。
⇒逮捕の春日電機元社長…「乗っ取り屋」が上場企業を私物化