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宮城知事の性犯罪前歴者監視案 首長からも異論渦巻く
宮城県の村井嘉浩知事が打ち出した性犯罪前歴者、ドメスティックバイオレンス(DV)加害者の行動を警察が常時監視する条例制定の検討に対し、県内の市町村長に異論が渦巻いている。性犯罪やDVの根絶を目指して議論を喚起した知事の姿勢に理解を示しながらも、複数の首長が「もっと優先すべき対策があるはずだ」と指摘した。 奥山恵美子仙台市長は25日の定例記者会見で「性犯罪は再犯率が高いということは分かるが、(結論を)急ぎすぎてはいけない課題。慎重に対応すべきだ」と語った。 衛星利用測位システム(GPS)端末を使った行動監視には「地域でどんなサポートが可能かの議論も深めないと、GPSが是か非か(の議論)に陥る」と懸念を示し、「地域で前歴者を見守るなど人と人のつながりの中で抑止してはどうか」と求めた。 村井知事が自民党県議時代の先輩に当たる佐藤勇栗原市長は「なぜこの時期、なぜ宮城からなのか。真意が不明」と疑問視。条例化の是非に関し「地域の安全はコミュニティーがしっかりしていれば守れるはず。現時点では不要」と言い切る。 布施孝尚登米市長も「唐突な印象だ。性犯罪が劇的に増えているなら分かるが、そこまでの状況ではない。なぜ性犯罪だけが対象なのか」と指摘。自治体の役割を「監視ではなく犯罪が起こりにくい環境づくりでは」と述べた。 滝口茂柴田町長は「何の前触れもなく、方針が打ち出された理由が分からない。規制強化は犯罪抑止につながる面があるが、全国に先駆けてするには議論の熟度が足りない」と違和感を示す。 知事の姿勢を評価したのは亀山紘石巻市長。「最初は驚いたが、好意的にとらえている。安全なまちづくりを目指すなら、これぐらい踏み込んだことが必要な社会情勢だ」と強調した。 石巻市では昨年2月、DVが発端となり、3人が殺傷される事件が起きた。「GPSでの監視と元加害者の矯正を両輪で考えるなら、あり得る措置だ」と話した。 伊藤康志大崎市長は、県議時代の後輩である知事の胸中を「元自衛官で正義感が強い。彼なりに被害者の現状に心を痛めていたのだろう」と推し量った。 論争の活発化を予想し「性犯罪防止への思い入れの強さを感じる。県民を巻き込んで大いに議論すべきだ」と語った。
2011年01月26日水曜日
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