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壊れる……壊れていく……
本作はフロム・ソフトウェアお得意のロボットアクションであり、『アーマード・コア』(以下『AC』)シリーズの血を色濃く受け継いでいる……という短めの説明で納得いかない人のために、もう少し突っ込むと、ホントは『AC』とはあまり関係ない。なぜなら本作を作ったのは『AC』開発チームではなく、XBOXの『O・TO・GI』開発チームだから。でも操作の基本的なところでは『AC』シリーズに近い部分もあり、だけど違いもまた多数あり……比較論で語るうちに、原稿を書いてる本人もワケがわからなくなってきたので、簡潔にまとめよう。『メタルウルフカオス』はロボットが敵や建物をガンガンぶっ壊していくゲームである。以上。
破壊、破壊、破壊……「創造」こそ人間の英知だというが、ところがどっこいわれわれは本能のどこかで破壊を欲する。
そこでまず本作は、われわれに盛大な火力を提供してくれる。メタルウルフが背負うバックパックには最大8つの軽火器・重火器が搭載され、戦闘中はその中から2つ選んで使用できる。二丁拳銃はもとより、二丁マシンガン、二丁バズーカ、二丁ミサイルポッドなどなど、ほとんどの武器を両手持ちしてフィーバーできる。さらにバーストゲージ満タンで、所持しているすべての火器からどっかんどっかん。わー、すごーい。
そしてさらに本作は、われわれに壊れやすいオブジェクトの数々も提供する。敵、と言っても同じアメリカ人なんだが、彼らの兵器や防衛拠点だけでなく、そこら辺に転がってるドラム缶、コンテナ、ビルの外装、自動車、看板、バリケード、カジノのスロット、アーケード街の天井、先代大統領の銅像(マイケルの父)などなど、目に映るものはみな破壊可能。地面や建造物まではさすがに破壊できないが(できたらゲームが破たんする)、それでもゲーム史上で一、二を争う破壊にこだわったゲームと言えるだろう。なお、繰り返すが敵は同じアメリカ軍であり、大統領が向かう先々で破壊しているものはすべてアメリカ市民の財産である。でも気にするな。
| 副大統領も大興奮。この二人の争いを止められるものは誰もいない |
しかし破壊しているだけではゲームにならない。強大な敵が目の前に立ちはだかってこそ、場が盛り上がるというもの。その点に関しては心配いらない。手強いヤツがいろいろ出てくる。むしろ序盤は難易度が高く思えるくらいだ。「私には大統領を名乗る資格はない……」と泣き言を言いたくなるほどに。だが、そこで簡単にあきらめないでほしい。本作は下手なプレイヤーの努力を認める方針のゲームだ。ミッションで人質を救出し、資金とレアメタルを稼ぎ、どんどん新たな武器を開発していけば、最終的にはどのミッションも楽勝の域まで難易度が下がる。武器開発と人質救出についてはコラムにまとめたので、行き詰まったら参考にしてほしい。
ゼロ発注に泣く
ところで……みなさんはXBOXの現状をご存知だろうか。特に雑誌などで情報収集していなくても、厳しいということはなんとなくわかると思う。現在、国内での普及台数は50万台ほど(調査機関により若干の変動あり)。過去のゲーム機たちと比較すると、メガCDやPC―FXよりは上だけど、バーチャルボーイや3DOよりは下という、つい遠くを眺めて目を細めたくなる微妙な市場規模である。マイクロソフトが広告を打ち続けているからゲーム雑誌上での存在感はあるものの、ショップの棚からは姿を消しつつある。
| 真のヒーローとは一体何か。プレイ後、自らの胸に去来する想いをかみしめろ |
こうなるとワリを食うのが『メタルウルフカオス』のようなソフトだ。ハードメーカーが力を入れて売っていこうとしている大作ならまだしも、サードパーティが発売する一点突破型の作品となると、もうショップ側にはどのくらい売れるか予想がつかない。だから発注数も控えめ(というか最悪ゼロ)になって店頭に並ばず、欲しがっているユーザーがいるのにソフトが出回らないという、誰にとっても不幸な結末となる。実際、俺が『メタルウルフカオス』『アウトラン2』『メックアサルト2』などを買う際も、置いているショップを探すところから始めなければならなかった。
これはハード末期になるとよく見かける光景であり、敗戦処理ならお手のもののユーゲー読者(ほめてるのか……?)なら言わずともわかっていることだろうが、念のため書いておこう。今、XBOXで欲しいソフトがあったら、発売前に予約して購入せよ! 発売済みのものが店頭になければ注文せよ! 面倒な話だが、ユーザー側から「ここに購入予定者が1人います」と宣言することで、お互いの取り引きが円滑に進む。『メタルウルフカオス』の公式サイトにも、一時期「入手困難が予想されますので、ご予約いただけるようお願いします」というお知らせが貼ってあった。ああ、切実。くだらないゲームが売れなくても俺の心は痛まないが、グッと来るゲームを見捨てたとあってはゲーオタの名がすたる。安くなるまで待ち、など論外だ。もし注文できないと言われたら「あンた、背中が煤けてるぜ」とつぶやいてから別のショップへ向かおう。苦労して手に入れたゲームの味は格別だぞ!
Text = 原田勝彦(フリーライター)
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※この記事は、雑誌「ユーゲー」2005年5月号(No.18)に収録された内容を再掲載しています。

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