リーダーの政治判断とは何か 小泉元首相の郵政解散で見た周到な準備と直感そして孤独

2010.12.20

 法人税減税や諫早湾問題の上告断念など、このところ菅直人首相が政治的な最終決断を強調している。

 法人税は国の問題であるが、諫早湾干拓事業は形式的には国営であるものの、実質は佐賀県と長崎県などの地方の問題だ。地方分権が不十分だったところに、国が関与することとなったので、よじれた話になったのだ。

 バブル期の1989年に干拓事業は国営としてスタートしたので、今さら国が責任を放棄するわけにはいかないが、地元の意向を尊重してやらなければいけない話だ。

 いずれにしても、このような地方問題まで国がわざわざ首を突っ込むのは、最近の支持率低迷を背景に、菅首相のリーダーシップをアピールする狙いがある。

 首相の決断といえば小泉純一郎氏が連想される。小泉元首相はどの様に政治決断したのだろうか。意外かもしれないが、それほど数は多くない。ここぞというときに決断したので、強い印象になっている。

 たとえば、2005年8月8日の衆議院解散、いわゆる郵政解散だ。8日、参院本会議で衆院を通過していた郵政民営化法案が否決された。その前から、小泉元首相は参院で郵政民営化が否決されたら衆院解散すると明言していたが、そのとおり決断した。

 日頃から、「首相のリーダーシップは衆院解散と人事」と言っていたが、その日はその集大成だった。臨時閣議で解散に反対した当時の島村宜伸農水相、麻生太郎総務相、中川昭一経産相、村上誠一郎行政改革担当相を個別に説得し、それにも従わなかった島村農水相を罷免して解散を閣議決定した。

 こうした大きな政治判断は、おそらく誰にもアドバイスを受けたわけではないだろう。

 その当時の大方の予想は、自民党の分裂選挙になり、民主党が漁夫の利を得るというものだった。自民党の内部調査でも自民党は200議席を割るといわれていた。郵政民営化に反対票を投じた自民党議員ですら、解散は単なる脅しとしか受け取っていなかった。そういう段階でアドバイスを受けても、衆院解散という発想は出てこなかったはずだ。

 衆院を解散しても、参院で否決されたら意味がないというのもある。おそらく、優れた政治家には、常人の発想を超えた独特の直感があるはずだ。

 小泉元首相は、人の話を聞くときに目をつぶっている。その理由として、人の顔を見ないで意見だけを聞いていると、ときどき、心の中に「すとーん」と落ちるときがある、それを信じるということを語ってくれたことがある。

 リーダーは、事前に虚心坦懐に幅広く意見を聞き十分な準備をしておき、最後は孤独に決断するものだ。

 (嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)

 

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