政府は10日、2011年度予算の特別枠への予算配分に向けた「政策コンテスト」の公開ヒアリングを開始した。政策コンテストとは、各省庁の予算要求(地方交付税や社会保障費を除く)を一律1割カットし、その中から1・3兆円を捻出(ねんしゅつ)して、それを新たに割り振るものだ。
今回の特別枠への要望事業には「在日米軍駐留経費負担」(思いやり予算)など削減が困難なものや、「高速道路無料化」など民主党マニフェスト(政権公約)の目玉施策もある。また、教員の給与など既存のものの看板書き換えもある。
防衛省や文科省など人件費比率の高い省庁では、一律1割カットで削ったものの、特別枠で復活させてきたのだ。思いやり予算は、削れるなら削ってみろとの挑発ともみれる。
絞っておいて後で少し返して絞ったことを忘れさせるのは財務省の予算編成上の常套(じょうとう)手段である。これまでも、予算シーリングで一律カットして、年末の政府案決定段階で、復活折衝でカットした予算の一部を還元し、復活させた政治家に花を持たせて、丸く収めていた。
自民党時代、ほとんどの査定作業は大蔵省(現財務省)で行われたが、政治家も存在意義を見せなければいけない。政府案を作る直前に、各省大臣が大蔵大臣のところで直談判し、予算を獲得する「儀式」が復活折衝だ。各省大臣のほかに、自民党幹事長や政調会長などの幹部も出てくる。
もちろん復活財源も復活折衝の進行管理もすべて大蔵省任せだった。しかし、表面的には、政治家が表舞台に立って政治主導を演じられる。今回の政策コンテストもこの復活折衝に似ている。
人件費が多い省庁では予算カットが難しいので、文科省のように1割以上カットした分はその3倍を上積み要求できるルールを活用し、全体の要望額の約3割を占める8628億円を要望した。継続事業を打ち切り、新たな事業として特別枠に要望したのだ。
そもそも人件費カットが難しいのは、公務員給与に対して民主党は甘いからだ。11日、国家公務員給与を人事院勧告通り年平均1・5%引き下げる給与法改正案について、衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われた。人事院勧告ではその基礎調査が大企業中心であり甘めの数字が出ること、人事院勧告を超えてやると菅直人首相は民主党代表選で主張していたこともあり、大問題だ。そうした公務員に甘めの給与体系にはメスを入れずに、特別枠の政策コンテストでお茶を濁している。
ただ、公務員労組は民主党の支持母体であるので、この既得権には勝てない。政策コンテストは政治主導の試金石である。
(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)