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注目記事

 

「KY総理」のキャラ分析 〜内なる熱さを秘めた黒子の未来やいかに〜

斎藤 環(精神科医)

くすぶる「KY発言」の余燼

 中国製餃子騒動の次は米兵暴行事件、それも解決しないうちに今度はイージス艦の漁船衝突と、次々に難題処理に追われる福田政権。内閣支持率もこのところ低め安定が定着しつつあり、昨年末の年金記録問題をめぐる「KY発言」の余燼が、いまだにくすぶっている感がある。
 ここで「KY」について簡単に振り返っておこう。福田康夫総理は12月12日、総理官邸で記者団に対し、年金記録の一部が特定困難になったことについて「公約違反というほど大げさなものなのかどうか」と述べ、翌13日の参院外交防衛委員会で、民主党の議員に問いただされると「正直いって公約が頭にさっと思い浮かばなかった。公約違反という大げさなものではないといった記憶はある」と釈明したのである。
 しかし、自民党が惨敗を喫した2007年参院選で、安倍前総理は繰り返し「来年3月までに、最後の1人まで照合を終わり、お支払いいたします」と訴えていた。年金問題は与野党対立の大きな争点であるだけに、この約束が果たされないとすれば、これはどう考えても公約違反というほかはない。
 発言の波紋は大きく、福田内閣の支持率は急落した。共同通信社が12月15、16日に実施した電話世論調査によると、福田内閣の支持率は35・3%と、11月上旬の前回調査に比べ11・7ポイント落ち込んでいる。不支持率は47・6%で、初めて不支持が支持を上回った。もちろん同時期に問題になっていた防衛省をめぐる一連のスキャンダルも、不支持には影響しただろう。しかし年金問題が、その主要な一因であることは間違いない。
 正直いって、これは残念なことだ。ここだけの話、私は個人的に福田総理のキャラクターが嫌いではない。それどころか、じつは歴代総理のなかでは、小泉元総理に次ぐ「萌えキャラ(好きなキャラ)」なのである。
 実際、2人のキャラクターはかなり共通しているようにも思われる。表面的なクールさ、素っ気なさと、内に秘めた熱さ、という印象はその最たるものだ。加えて福田総理は、小泉内閣の改革を基本的には支持し、踏襲する姿勢を打ち出している。
 ただ、そのせいかどうなのか、失言のパターンも似通ってみえるのだ。
 小泉元総理も、国債30兆円枠の公約を守れなかった件について、「この程度の公約を守れないことは大したことではない」と強弁し、年金に絡んでは「人生いろいろ。会社もいろいろ。社員もいろいろだ」と発言するなどして、強く批判されている。どうやらこの2人にとって、「公約」と「年金」は鬼門のようだ。
 しかし、失言や政策の評価は慎重に下さなければならない。実際、小泉内閣時代の政策評価は、論壇誌ではほぼ9割近くが批判的だったと記憶するが(なぜか『諸君!』の巻頭コラム「紳士と淑女」だけは一貫して小泉支持だった)、いまやその比率も逆転しつつある。もっとも小泉氏が後年間違いなく「名宰相」呼ばわりされることは現役時代から容易に予測可能だったし、当時のいわゆる識者の多くがそれを予測できないのはむしろ不可解なほどだった。
 念のために付け加えておくが、私は福田総理や小泉元総理を手放しで名宰相であると評価しているわけではない。相対的な評価はもちろん高いが、私が望ましいと考える方向とは、かなり距離がある。しかしたとえ相対的にせよ、私のなかにあるこの好感の正体をもう少し詳しく検討しておく価値はあるかもしれない。

「ツンデレ執事」キャラ

 唐突だが、福田総理は「ツンデレ執事」キャラである。
 いきなり何を言い出すのかと思われるかもしれないが、じつは私は精神分析よりもキャラ分析のほうが得意なので、まずは福田総理のキャラを分類してみた、というわけだ。
 キャラといえば思い出されるのは、2007年9月に安倍総理の突然の辞任を受けて行なわれた自民党総裁選である。周知のとおり、結果は330票を得た福田氏の圧勝だった。しかし私が注目したのは、対立候補だった麻生太郎氏の「キャラ」発言である。記者会見で麻生氏はこういったのだ。「私は非常にキャラが立ちすぎているが、福田氏はあまりそうじゃない」と。
「キャラが立つ」とは、もともと漫画業界で使われていた表現だ。印象的な性格造形で登場人物の個性を際立たせる、というほどの意味だが、お笑い業界でも使用されるようになって一般にも浸透した。そんな「専門用語」をさらりといってのけるサブカルチャー通ぶりも、若者の麻生人気を高めただろう。
 しかし私は、むしろ麻生氏の半可通ぶりに嫌な印象を受けた。本当にサブカルチャーに詳しければ、福田氏がネット上で何と呼ばれているか知らないはずがない。

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