2011年1月24日22時34分
【ラマラ(パレスチナ自治区)=井上道夫】中東の衛星テレビ局アルジャジーラは23日夜、パレスチナ和平交渉の議事録など大量のパレスチナ側の内部文書を入手し、それに基づく報道を始めた。2008年の交渉では、パレスチナ側がイスラエルに対し、占領地東エルサレムのユダヤ人入植地の大部分をイスラエルが併合することを認める譲歩案を提示していたという。
譲歩案は、国家樹立に向けた現実的な解決策を模索する当時のパレスチナ交渉団の姿勢を示したものと言える。だが、入植地問題での譲歩は交渉で主要争点となっている境界画定に影響を及ぼす。大幅な譲歩を提案していたことが明るみにでたことで、アッバス自治政府議長ら指導部に対する市民の信頼が揺らぎ、反発を招く可能性もある。
アルジャジーラが入手したのは、1999年から昨年までの和平交渉に関する議事録や電子メールなど計約1700通の書類。入手経路や作成者については明らかにしていないが、同テレビ局と連携し、同時に報道した英紙ガーディアンは「パレスチナの秘密記録」としている。
アルジャジーラが公表した「3者会談の議事録」によると、双方の交渉担当者と仲介役のライス米国務長官(当時)が08年6月15日、エルサレムで会談。クレイ・パレスチナ自治政府元首相は、ライス氏に「パレスチナ側は、ハルホマをのぞく東エルサレムのすべての入植地をイスラエル側が併合することを認める提案をした」と説明した。
提案にはヨルダン川西岸の入植地をめぐってイスラエル側の譲歩を引き出すことを狙った可能性があるが、協議は難航し、その後具体的な進展はなかった模様だ。
難しい立場に立たされたパレスチナ指導部は24日、全パレスチナ人を代表するパレスチナ解放機構(PLO)のアベドラボ事務局長が自治区ラマラで記者会見し、「パレスチナ側の何者かがリークした」と述べ、アルジャジーラが公表した内部文書が本物であることを認めた。
一方で、「(議事録などは)交渉の一部を抜粋したものであり、全体像が明らかになっていない」と指摘。「交渉中の雑談などで出てきた話があり、公式見解を示したものといえない」と弁明した。
アルジャジーラは26日までに順次、入手した内部文書の内容を報道していくとしている。