「代替医療のトリック」のトリック
サイモン・シンとエツァート・エルンストの「代替医療のトリック」は「科学的根拠に基づいた医療」として知られるアプローチを駆使した代替療法の検証です。科学者たちによる検証の結果は、代替医療には科学的根拠は無い、プラセボ以上の効果は無い、というものでした。
まあそれは良いとして、この本のトリックとは何でしょう?
wikipediaによれば、
根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)とは、「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」("conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence") 医療のあり方をさす。
この動きが起きたのは1990年。つい最近です。
そしてこの運動によって最も恩恵を受けたのは、医療本体です。代替療法ではない医療をここでは仮に通常医療と呼びます。
そして、逆に通常医療がいかに科学的根拠に基づいていなかったかを赤裸々にしたのもこの運動の成果です。
同じくwikipediaには、
これを最も端的にあらわすのが2004年より、ハーバード大学教授の Donald Berwick が病院での死亡率を減らすことを励行する「10万を救うキャンペーン」(100000 lives campaign)である。(中略)結果としてアメリカの3000以上の病院がこのキャンペーンに参加した結果、18か月で統計上の推定で12万人以上の死亡者の軽減が認められた。
ということはそれまでの通常医療は18ヶ月で統計上の推定で12万人以上を死に追いやっていたということです。そしてその医療には実は「根拠が無かった」というのが論理的な帰結です。
サイモン・シンは科学的根拠に基づく医療のアプローチは、医療の現場に革命を起こしたと書いています。「ニセ医者や藪医者の天下だった医療」を「奇跡のようなことができるものにした」そうです。あまりにナイーブな意見ですが、それはともかく、その結果として「天然痘を撲滅し」(p.19)とありますが、「科学的根拠に基づく医療」は1990年、天然痘の撲滅は1980年です。
サイモン・シンは認知的バイアスにかかっているようです。
彼が引用する個別の事例はすべて代替療法にネガティブなものばかりです。
科学的には、事例を集めてもデータにはなり得ない、と言いながら著作では許されるというのは奇妙な論理です。
またサイモン・シンのおかしな点は最初にヒポクラテスの警句を引くところです。
「トラディショナル」に権威を求める代替療法を批判しながら、自身の著作では伝統的な言説を最初に持ってきます。
「科学と意見という、二つのものがある。
前者は知識を生み、後者は無知を生む」
サイモン・シンの基準で言えば、科学無き時代の代替療法家の言葉に何か意味はあるのでしょうか?
彼の四体液説が瀉血につながったことは、サイモン・シン自体も書いています。
そしてヒポクラテスと「根拠に基づいた医療」までどれほどの年月がかかったかを鑑みれば、そこに相関関係を見出すのはあまりにナイーブではないでしょうか?
彼は通常医師はヒポクラテスの時代から科学的だったとでも言いたいのでしょうか?(実際にそれに類することを書いています)しかし、ヒポクラテスは2400年前の人であり、「根拠に基づいた医療」は1990年からです。
「科学的根拠に基づいた医療」以前の医療はサイモン・シン等の方針によれば、すべて疑似科学ではないでしょうか。根拠が無かったのは代替医療も通常医療も両方とも同じです。
実際に、通常医療の根拠の無さは「科学的根拠に基づいた」検証の結果、赤裸々となりました。それまでの標準療法が覆された点はたくさんあります。
「いやいや、医学は科学であり、科学の成果を取り入れ改善するが、代替療法は違う」と言うかもしれませんが、それもまた偏見です。代替療法も科学を取り入れて変化しています(変化しない代替療法家もたくさんいます。医師も同じです)。そしてその(代替療法も科学を取り入れ変化するという)事実はサイモン・シン自体もこの著作の中で認めています。
サイモン・シンは返す刀で正統医療を「科学的根拠に基づいた医療」でその効果を検証したらどうでしょう。代替療法の欺瞞性と詐欺性が可愛らしく見えるのではないでしょうか?
「科学的根拠に基づいた医療」という武器は通常医療と代替医療の双方に使われるべきものです。実際に「科学的根拠に基づいた医療」の恩恵を受けているのは通常医療です。多くの「正しい」とされてきた医療行為がむしろ患者を害していたことが分かってきました(当然と言えば、当然で、通常医療の方がはるかに侵襲性は高いからです)。
ですから、「科学的根拠に基づいた医療」は通常医療も代替療法も「効果なし」の烙印をかなり押したと言えます(もちろんその科学的根拠自体も科学ですから当然その結論はクルクルと変わりますが)。
ところが、その成果を代替医療にだけ用いたというのがこの本のトリックです。
代替医療のトリック/サイモン シン

¥2,520
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まあそれは良いとして、この本のトリックとは何でしょう?
wikipediaによれば、
根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)とは、「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」("conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence") 医療のあり方をさす。
この動きが起きたのは1990年。つい最近です。
そしてこの運動によって最も恩恵を受けたのは、医療本体です。代替療法ではない医療をここでは仮に通常医療と呼びます。
そして、逆に通常医療がいかに科学的根拠に基づいていなかったかを赤裸々にしたのもこの運動の成果です。
同じくwikipediaには、
これを最も端的にあらわすのが2004年より、ハーバード大学教授の Donald Berwick が病院での死亡率を減らすことを励行する「10万を救うキャンペーン」(100000 lives campaign)である。(中略)結果としてアメリカの3000以上の病院がこのキャンペーンに参加した結果、18か月で統計上の推定で12万人以上の死亡者の軽減が認められた。
ということはそれまでの通常医療は18ヶ月で統計上の推定で12万人以上を死に追いやっていたということです。そしてその医療には実は「根拠が無かった」というのが論理的な帰結です。
サイモン・シンは科学的根拠に基づく医療のアプローチは、医療の現場に革命を起こしたと書いています。「ニセ医者や藪医者の天下だった医療」を「奇跡のようなことができるものにした」そうです。あまりにナイーブな意見ですが、それはともかく、その結果として「天然痘を撲滅し」(p.19)とありますが、「科学的根拠に基づく医療」は1990年、天然痘の撲滅は1980年です。
サイモン・シンは認知的バイアスにかかっているようです。
彼が引用する個別の事例はすべて代替療法にネガティブなものばかりです。
科学的には、事例を集めてもデータにはなり得ない、と言いながら著作では許されるというのは奇妙な論理です。
またサイモン・シンのおかしな点は最初にヒポクラテスの警句を引くところです。
「トラディショナル」に権威を求める代替療法を批判しながら、自身の著作では伝統的な言説を最初に持ってきます。
「科学と意見という、二つのものがある。
前者は知識を生み、後者は無知を生む」
サイモン・シンの基準で言えば、科学無き時代の代替療法家の言葉に何か意味はあるのでしょうか?
彼の四体液説が瀉血につながったことは、サイモン・シン自体も書いています。
そしてヒポクラテスと「根拠に基づいた医療」までどれほどの年月がかかったかを鑑みれば、そこに相関関係を見出すのはあまりにナイーブではないでしょうか?
彼は通常医師はヒポクラテスの時代から科学的だったとでも言いたいのでしょうか?(実際にそれに類することを書いています)しかし、ヒポクラテスは2400年前の人であり、「根拠に基づいた医療」は1990年からです。
「科学的根拠に基づいた医療」以前の医療はサイモン・シン等の方針によれば、すべて疑似科学ではないでしょうか。根拠が無かったのは代替医療も通常医療も両方とも同じです。
実際に、通常医療の根拠の無さは「科学的根拠に基づいた」検証の結果、赤裸々となりました。それまでの標準療法が覆された点はたくさんあります。
「いやいや、医学は科学であり、科学の成果を取り入れ改善するが、代替療法は違う」と言うかもしれませんが、それもまた偏見です。代替療法も科学を取り入れて変化しています(変化しない代替療法家もたくさんいます。医師も同じです)。そしてその(代替療法も科学を取り入れ変化するという)事実はサイモン・シン自体もこの著作の中で認めています。
サイモン・シンは返す刀で正統医療を「科学的根拠に基づいた医療」でその効果を検証したらどうでしょう。代替療法の欺瞞性と詐欺性が可愛らしく見えるのではないでしょうか?
「科学的根拠に基づいた医療」という武器は通常医療と代替医療の双方に使われるべきものです。実際に「科学的根拠に基づいた医療」の恩恵を受けているのは通常医療です。多くの「正しい」とされてきた医療行為がむしろ患者を害していたことが分かってきました(当然と言えば、当然で、通常医療の方がはるかに侵襲性は高いからです)。
ですから、「科学的根拠に基づいた医療」は通常医療も代替療法も「効果なし」の烙印をかなり押したと言えます(もちろんその科学的根拠自体も科学ですから当然その結論はクルクルと変わりますが)。
ところが、その成果を代替医療にだけ用いたというのがこの本のトリックです。
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