牧太郎の大きな声では言えないが…

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牧太郎の大きな声では言えないが…:普通においしい?

 東京・新橋のバス停前。とあるラーメン屋に列ができている。

 列の最後尾の若者に「ここ、うまいの?」と聞けば「普通においしいですよ」。

 普通においしい? よく分からないが……ともかく並んだ。

 うまかった。太麺。味はこってり。5枚も入っている「海苔」はバリバリとして最上品なのだろう。隣り合った、例の若者に「うまいじゃないか?」と言うと「そうでしょ」と笑っている。

 何か、彼とは日本語が通じたような、通じないような……会社に戻って、この奇妙な経験を同僚に話すと「普通においしい、というのは、すごくおいしい!という意味ですよ」。

 エッ、本当なのか?

 普通の「普」は「並」の下に「日」と書く。「並」は横に広がることを表し「通」はあまねく知れ渡っているという意味。だから広辞苑で「普通」は(1)ひろく一般に通ずること(2)どこにでも見受けるようなものであること……とある。この若者は「広く知れ渡ったおいしさ」とでも言いたかったのか? でも「普通においしい」はやっぱりおかしい。

 同僚は「今の若者は、もの心ついてから不況の連続。自分のことを“普通以下”と考えている。だから彼らが言う“普通”とはワンランク上の事なんですよ」。

 そういえば「普通」という言葉は曖昧だ。

 社会現象になった「AKB48」を「ごく普通の娘じゃないか」と思っている。彼女らにオーラを感じない。だから、といって「嫌い」ではない。普通である。

 昔の大スターには熱狂的なファンがいる半面「嫌いだ」という人も多かった。美空ひばり、松田聖子……大スターに対する「好き嫌い」は両極端だった。

 「AKB48」を嫌いな人は少ないような気がする。誰もが嫌いでないのが、大スター? 彼女たちは「普通」にして「すごい大スター」なのかもしれない。

 僕が東京・秋葉原の近くに住んでいると聞いて、親戚の若者が「毎日、AKB48が見れますね」とうらやましげに言う。「AKB48」は秋葉原のビル8階の専用劇場で毎日、公演しているらしい。

 「AKB48? 興味はあるけど……毎日は見ないよ。普通の日本人だから」と言ってから……当方の言い分が正確に通じたか?ちょっと心配になって……。日本語は変わったのか?(専門編集委員)

毎日新聞 2011年1月25日 東京夕刊

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