きょうの社説 2011年1月26日

◎地デジ移行へ半年 心配な石川のワースト5
 全国トップクラスのはずが、あっという間にワースト5位にまで落ちてしまった。石川 県での地上デジタル放送(地デジ)受信機の世帯普及率である。2010年9月末時点での普及率86・6%は、全国5位の富山県(92・7%)に遠く及ばず、全国平均の90・3%を下回る。半年後に迫った地デジ放送への完全移行に向け、不安の残る低さである。

 2009年9月時点では石川県の普及率は全国2位の77・1%で、富山県(72・4 %、17位)を引き離していた。それがわずか1年で逆転し、水をあけられてしまった。この1年の伸び率は富山県の20・3ポイントに対し、石川県は半分以下の9・5ポイントにとどまり、大きな差となったのである。

 片山善博総務相は会見で、7月24日に予定している地デジへの完全移行について「延 期は毛頭考えていない」と明言した。政府は、切り替えが進んでいない高齢者世帯への普及を後押しするため、全国20万人規模のボランティアを組織するというが、100%を要求される業務は、最後の詰めが最も難しい。半年後にテレビの視聴ができなくなる「テレビ難民」を減らす一層の努力が求められる。

 地デジの受信方法は主に3つある。地デジ対応テレビを買うか、アナログテレビのまま で、地デジが受信できる簡易チューナーを購入するか、ケーブルテレビ(CATV)に加入するかだ。実情にあった受信方法の周知徹底に力を入れる必要がある。

 石川県で普及率が悪い原因は、はっきりしないが、県民性の違いを指摘する声がある。 石川県では、目新しい物や新商品がよく売れるという。たとえば携帯電話の普及率は、現在は全国平均(93・3%)を大きく下回る83・6%だが、2000年ごろまでは東京、愛知、大阪に次ぐ全国4位の普及率だった。地デジに関しても、同じことが言えるのではないか。

 地デジ対応の薄型テレビが急激に普及したのは、価格が安くなったのと、家電エコポイ ント制度のおかげだろう。富山県で、過去1年の伸び率が石川県の倍以上だったのは、エコポイントを機に、購入に踏み切った堅実な県民性が影響しているのかもしれない。

◎互助会への公費支出 強まる廃止、縮減の流れ
 自治体職員の福利厚生事業を行う互助会への公費支出を廃止、縮減する動きが強まって いる。石川県内では19市町のうち14市町が2010年度までに廃止した。富山県内は15市町村のうち廃止は4市町村にとどまるが、支出総額は前年度より約15%減少した。石川、富山県はともに廃止に踏み切っている。行財政改革が自治体の至上命題になるなか、職員互助会の福利厚生事業に対する公費支出の廃止、縮減は時代の流れともいえる。

 職員互助会を通して行われる自治体の福利厚生事業は、結婚祝金や出産・入学祝金、退 会給付金、災害見舞金、医療費補助、レクリエーション補助など多様であり、民間に比べて手厚い。これらに補助金を出すことは、給与の二重取りであるとか、厚遇過ぎるといった批判が強まったため、総務省は04年度に「福利厚生事業の点検・見直しを行い、住民の理解が得られるよう適正に実施する」ことを自治体に求めた。

 それ以来、自治体の事業実施状況の調査が行われており、10年度のまとめでは、公費 支出を廃止した自治体は520に上る。個別事業を見直す自治体も多く、10年度の公費支出総額は、調査を開始した04年度より約700億円減の139億円に削減された。

 自治体は「職員の保健、元気回復」などに関する福利厚生事業の実施を地方公務員法で 義務付けられている。このため、ほとんどの自治体で、福利厚生事業を行う職員互助会が条例で設置された経緯がある。地方公務員共済組合の設置後も互助会は存続し、共済組合の事業を補完する形で福利厚生事業を行ってきたが、共済組合と違って法律の規定のない互助会に公的補助を行う必要があるのか疑問視する向きもあり、根本的な議論を深める必要もあろう。

 総務省はまた、職員互助会の福利厚生事業に公費を支出している自治体に、事業内容の 公表を求めているが、10年度調査では、市町村の公表率が全国平均で69%(富山90%、石川60%)という状況であり、未公表の自治体がまだ多いのは残念である。