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【社会】

僕もタイガーに救われた 歌手森本さん 幼時に離別体験

2011年1月25日 13時53分

「この歌は特別です」とアニメ・タイガーマスクの主題歌への思い入れを語る歌手の森本英世さん(戸上航一撮影)

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 プロレス漫画「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」を名乗る贈り主から児童相談所などへの寄付が相次ぐ中、かつてテレビアニメの主題歌「行け!タイガーマスク」を歌った歌手森本英世さん(62)に、チャリティーコンサートの要望が舞い込んでいる。自身の子ども時代の体験と重ね、タイガーマスクに人一倍の思い入れがあるという森本さんは「歌で、厳しい境遇にある子どもたちを元気づけられれば…」。全国で広がる寄付運動を機に、児童養護施設への慰問にも意欲を示している。 (社会部・井上幸一)

 今月十八日、東京都町田市高ケ坂のこひつじ幼稚園。「白いマットのジャングルに〜」と、森本さんの力強い歌声が響いた。虎のマスクを着け、「行け!行け!タイガー」と歌うと、三百人以上の園児らは大喜び。すぐに歌を覚えてしまい、大合唱となった。

 コンサートは寄付運動が報道された後の今月中旬、保護者から「話題のタイガーの歌を聴かせて」と依頼を受けた。アニメを知らない園児の予想以上の反応に、森本さんは「タイガーは今でもヒーローなんだ…」と実感したという。

 森本さんには切ない過去がある。幼いころ、母親が離婚した。「二、三歳のころ、家庭の事情から、見ず知らずの人の養子となった」と森本さん。

 小学生になる前に親元に戻されたが「養子先では寂しくて泣いてばかりいた。当時とは時代は違うが、施設の子どもたちの気持ちは痛いほどよく分かる」と語る。

 大手芸能プロのオーディションに合格し、一九六五年に大阪から上京。六九年、新田洋の芸名でのデビュー曲が、タイガーの主題歌と、番組のエンディング曲「みなし児のバラード」だった。「『みなし児の 正しく生きるきびしさを』という歌詞は、子どもの頃の自分そのまま。涙をこらえて録音するのが大変だった」と振り返る。

 現在の芸名になり、ムード歌謡の「敏いとうとハッピー&ブルー」にリードボーカルとして参加。「わたし祈ってます」「星降る街角」「よせばいいのに」と立て続けにミリオンセラーを飛ばした。しかし、森本の名が前面に出なかったため知名度は上がらず、ソロとなってからは、大ヒットには恵まれていない。地方局のカラオケ番組の司会などをしながら、ムード歌謡の歌手として舞台に立ち続けてきた。

 四十余年の時がたち、意外な形でデビュー曲に脚光が当たっている。「日本中の伊達直人は、おそらく還暦を過ぎた僕と同世代と思う。僕自身も、ニュースを見てよみがえったような気分だし、子どもたちと同じように伊達直人に救われた気がする。タイガーに恩返しするような気持ちで、歌に力を入れていきたい」

(東京新聞)

 

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