角膜ジストロフィー(corneal dystrophy)は、角膜の中心に濁りが発生し、年をとる度に次第に濁りが激しくなって視力が低下する常染色体優性遺伝疾患であり、アベリノ角膜ジストロフィー(Avellino corneal dystrophy)、顆粒状角膜ジストロフィー(Granular corneal dystrophy)、I型格子状角膜ジストロフィー(lattice type I corneal dystrophy)及びレイス・バックラースI角膜ジストロフィー(Reis-bucklers corneal dystrophy)などがあり、βIG−H3タンパク質をコーディングする遺伝子の突然変異により発生する。
これらの中で、アベリノ角膜ジストロフィー患者は、年齢の増加に伴って異型接合体(heterozygote)は相当の視力損失を示し、同型接合体(homozygote)の場合には6歳から失明する。アベリノ角膜ジストロフィーは、顆粒状角膜ジストロフィーとして通称されていた疾患であるが、遺伝子の違いが発見されて1988年に分離されて新たに命名された疾患であり、全世界的に最もありふれた角膜ジストロフィーとして知られており、遺伝子解析の結果、韓国における有病率(異型接合体の場合)が1/340〜1/1,000と極めてありふれた疾患であると言われている(Holland, E.J. et al., Ophthalmology,99:1564, 1992; Kennedy, S.M. et al., Br. J. Ophthalmol., 80:489, 1996; Dolmetsch, A.M. et al., Can. J. Ophthalmol., 31:29, 1996; Afshari, N.A. et al., Arch. Ophthalmol., 119:16, 2001; Stewart, H.S. Hum. Mutat.,14:126, 1999)。
本発明者らは、異型接合体のアベリノ角膜ジストロフィー患者が、レーシック手術を受けると約2年後から角膜の濁りが急増して失明するということを見出した(Jun, RM et al., Ophthalmolgy, 111:463, 2004)。以前は、レーシックまたはエキシマーレーザー手術により角膜ジストロフィー患者の濁りがなくなるという予測下で、多くの施術がなされており、これまで韓国において施術されたレーシック手術の件数は約30万件であると推定されるが、韓国におけるアベリノ角ジストロフィーの異型接合子の頻度を最小の計算値の1/1,000であるとしても、300名が視力を失っていると推測することができる。レーシック手術を受ける患者は、主として20−30代の生産的な活動をする人口層であって、これら患者の失明は社会的、経済的に深刻な問題となる。
また、2000年以来にレーシック手術の施術許可が公表されたアメリカの場合、黒人からもアベリノ角膜ジストロフィー患者のレーシック手術による失明が発見され始め、全世界的に多数の患者が施術後に病勢が進行中であることを推測することができる。
このため、レーシック手術の施術前にアベリノ角膜ジストロフィー患者に対する正確な診断を行うことによりレーシック手術による症状進行を防がなければならないが、既存の眼科においては、眼科医者が顕微鏡により眼球濁りを検査するだけでアベリノ角膜ジストロフィーを診断しており、症状が未進行の患者の場合には発見できず、レーシック手術を行って失明に発展する場合もしばしば発生していることから、正確で且つ迅速な角膜ジストロフィーの診断方法が切望されているのが現状である。
そこで、本発明者らは、角膜ジストロフィーの原因となるBIGH3遺伝子の突然変異を正確で且つ迅速に診断可能なDNAチップを開発するために鋭意努力した結果、BIGH3遺伝子の特定の突然変異部位を含有するプローブを作製し、これを固定したDNAチップを用いて角膜ジストロフィーを効率よく診断することができるということを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明は角膜ジストロフィー診断用のオリゴヌクレオチドに係り、さらに詳細には、眼科の視力校正手術前に正確に診断されるべきアベリノ症をはじめとする角膜ジストロフィーを診断するためのBIGH3遺伝子突然変異検出用のオリゴヌクレオチド及び前記オリゴヌクレオチドが固定されていることを特徴とする角膜ジストロフィー診断用のDNAチップに関する。本発明によれば、従来、顕微鏡によってのみ診断されていたジストロフィーを遺伝的に正確に診断することができ、角膜ジストロフィー患者が誤診により視力校正手術を施術されて失明することを防ぐことができる。
発明の要約
従って、本発明の目的は、角膜ジストロフィーの原因となるBIGH3遺伝子の特定の突然変異部位を含むオリゴヌクレオチドを提供する
以前は、レーシックまたはエキシマーレーザー手術により角膜ジストロフィー患者の濁りがなくなるという予測下で、多くの施術がなされており、これまで韓国において施術されたレーシック手術の件数は約30万件であると推定されるが、韓国におけるアベリノ角ジストロフィーの異型接合子の頻度を最小の計算値の1/1,000であるとしても、300名が視力を失っていると推測することができる。