2010年11月26日 21時11分 更新:11月27日 1時34分
家電エコポイントがほぼ半減される12月1日を目前に、家電量販店の店頭では対象商品の「駆け込み需要」がピークを迎えている。特に薄型テレビは前年の6倍近い売れ行きを記録。品切れ状態の商品も多く、配送に3カ月かかるケースも出ている。各量販店は今週末が商戦のピークとみて、店員を増やすなどの対応に追われ、メーカーも増産に動いている。【谷多由、井出晋平、弘田恭子】
「もらえるポイントはもらわないと損。今のうちに買わないと」。26日、「ヨドバシカメラマルチメディアAkiba」(東京都千代田区)で薄型テレビを品定めしていた女性会社員(25)はこう話した。平日昼間ながら仕事の合間に立ち寄る会社員らでにぎわい、店員の商品説明は番号札を渡されて順番待ち。今週は平日でも夕方のピーク時に順番待ちが70人を超え1時間待ちのこともあった。同店は通常約40人の店員を10月半ば以降、2割増員。休日には80~100人態勢で対応に追われる。
民間調査会社GfKジャパンによると、11月の薄型テレビの販売台数は前年同期比約5~6倍で「過去に例のない急拡大」。ヨドバシでは商品の約7割が品切れ状態。ほとんどの商品が配送まで1~2カ月待ちで、なかには3カ月待ちも。
エコポイントを満額受けるには11月中に代金を支払う必要があり、今週末が最大のピークになりそう。家電量販各社は「売り上げ、忙しさとも年末商戦に匹敵する」(ビックカメラ)と予想する。
下落基調だった価格も持ち直した。調査会社BCNによると、薄型テレビの平均価格は売れ筋の32型で9月に6万円を切ったが、11月第3週は6万3000円まで回復した。
メーカーは増産などの対応をとる。パナソニックは「来年7月のアナログ停波に向けてフル生産だが、それ以上の注文が来ている」という。日立製作所は岐阜県の工場の生産台数を月産10万台から14万台に引き上げた。ソニーも愛知県のテレビ工場を土曜日も稼働。国内販売子会社の栗田伸樹社長は「今週末がピーク。納入を遅らせないよう工場も販売要員もフル稼働。年末商戦が続くので12月末まで販売態勢増強を続ける」と話す。
猛暑で夏の売れ行きが好調だったエアコン販売も上向く。三菱電機は10月以降、例年の倍以上を出荷。「2、3台まとめ買いする方もいる。倉庫はガラガラ」。日立は海外からの部品供給が追いつかず、船便から航空便に切り替えた。
伊藤忠商事調査情報部の三輪裕範部長は、「予想以上の駆け込み需要で10~12月の国内総生産(GDP)の押し上げ効果が期待される」と指摘する一方、「エコカー補助金の駆け込み需要などがあった7~9月の反動減は埋めきれないだろう」と予測している。
家電エコポイント制度の今後の変更点は大きく分けて二つある。12月からのポイント半減では、例えば、これまで3万6000ポイントが付与された46型薄型テレビは1万7000ポイントに、9000ポイントのエアコン(3.6キロワット以上)が5000ポイントなどになる。
来年1月からは、付与条件も厳しくなる。対象商品を、省エネ性能を5段階表示する「統一省エネラベル」制度で現在の「四つ星以上」から、最も消費電力が少ない「五つ星」に限定。現在に比べ対象商品は、薄型テレビで60%、冷蔵庫45%、エアコン15%程度に絞り込まれる。さらに、買い増しは対象にせず、買い替えのみにポイントを付与する。
エコポイント関連の予算は、26日成立の10年度補正予算を含め約6930億円で、10月末までに発行したポイントは3535億円分。大畠章宏経済産業相は26日の閣議後会見で、「(6930億円の予算で)基本的に十分対応できると思う」と述べ、期限前に予算不足で打ち切られたエコカー補助金の二の舞いにはならないとの認識を示した。ただ、自動車販売が補助金終了後に大幅に減っており、家電でも制度終了後の反動減を懸念する声もある。【増田博樹】