菅直人首相は通常国会冒頭の施政方針演説で、沖縄政策を独立した項目立てにして、積極姿勢を示した。歴代政権と比較しても演説の多くを沖縄関連に割き、沖縄振興策強化を打ち出した。ただ、2011年度末で期限が切れる沖縄振興特別措置法に代わる新法制定への言及はなく、具体策は乏しい。基地問題でも県民の負担軽減は強調するものの、米軍普天間飛行場の移設をめぐり、仲井真弘多知事が見直しを訴えている、日米合意を踏襲する方針をあらためて示した。振興策、基地問題解決に向けた踏み込み不足と、あいまいさは否めない。
項目の題名は「沖縄の振興強化と基地負担軽減」。民主政権で初めて振興の「強化」を掲げた。昨年末以降、菅首相をはじめ、沖縄担当相、防衛相、官房長官(沖縄担当兼務)ら閣僚が相次ぎ、来県するなど「沖縄重視」をアピールしてきた方針継続の意向を示した。
政府関係者によると演説の文案作成に当たって、首相自らが沖縄を項目に入れるよう要望した。沖縄訪問を踏まえ、首相自身の思いがあるという。
首相周辺は「振興への思いはこれで伝わると思う。具体的な施策に踏み込んでいるとはいえないが、新法に消極的という訳ではでない」と話すが、県選出国会議員や県の反応は厳しい。
県幹部は「沖縄振興について実質的に触れているのは『その実現を沖縄振興予算で支援する』だけ。もう少し踏み込んでほしかった」と不満をにじませる。
普天間をめぐっては、海兵隊のグアム移転や米軍施設返還などによる危険性除去に「最優先」に取り組むとしたものの、具体的な軽減策については示さなかった。
菅首相が沖縄政策をどのように進めるのか。県民は施政方針演説で語られた思いだけでなく、具体的に提示される振興策の在り方や基地負担軽減の取り組みを注視している。国会中の首相や各閣僚の答弁、姿勢が問われる。(東京支社・銘苅一哲)