韓国でも増えるニート(上)
【失われた20年、日本に学ぶ】
ソウル・江北地区に住むキム・インスンさん(60)は毎月1日と15日、一人息子(33)に30万ウォン(約2万1800円)の小遣いを渡してから仕事に向かう。キムさんは、ある政府系企業を定年退職した夫(65)と、商店街で小さな店を経営している。息子が大学を卒業するころには、ほかの人と同じようにすぐ就職し、結婚するものと思っていた。ところが息子はここ5年ほど、仕事もせずにブラブラした生活を送っている。
息子が仕事をして金を稼いできたのは、2006年4月が最後だった。建設工事現場の契約社員として、造形工事の監督を任されていたが、1年4カ月後に「仕事がきつい」と言って仕事を辞め、家に帰ってきた。
それから息子は毎日、単調な日々を過ごしている。朝8時に起き、午前中はテレビを見るか、インターネットに興じ、午後には運動するという生活だ。母はそんな息子を見ているとつらいが、本人は淡々としている。母からもらう小遣いで、交通費に6万ウォン(約4400円)、ガソリン代4万ウォン(約2900円)、それ以外に1日1万ウォン(約730円)から2万ウォン(1万4500円)ほどを使う生活にすっかり慣れてしまったようだ。
「いろいろ就職活動もしてみたが、面接で落とされるか、条件が合わなかった。次第に年齢で引っかかるようになり、就職をあきらめた」
このような若者は「ニート族」と呼ばれる。「就職せず、学校にも通わず、何か職業訓練を受けているわけでもない」ことを意味する言葉(Not in Employment, Education or Training)だ。就職難で臨時職やアルバイトを転々とし、ついには働く意欲まで失ってしまった若者たちを指す。
統計庁によると、2009年の時点で進学や兵役、疾病など明確な理由もないまま仕事をせず、就職活動もしていない15-29歳の若者の数は29万7000人。集計が始まった03年と比較すると、ニートの数は6年間で7万2000人増えた。人口1億2700万人の日本のニート(09年で44万人)と比べても、決して少ない数ではない。1990年半ばに隣国・日本でニートの問題が浮上し始めたころ、韓国は「最近の日本の若者は覇気がない」「日本の将来も先が見えた」などと見下していた。ところが韓国もいつの間にか、同じような問題で頭を抱えるようになったのだ。
ニートの最も大きな問題は、「意欲がない」ことだ。若年失業者団体「全国白手連帯」のチュ・ドクハン代表(41)は、「最近の若者は自分のことを平気で“残り物”と呼ぶ」と語る。就職できない現実に怒りを覚えたり、何とか克服しようとするのではなく、力を失って自嘲するケースが増えているということだ。
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