[中間試験問題解答]
1.標準の決定法に関する以下の設問に解答せよ。
(a) [名前] ジョセフソン電圧標準
[原理] 周波数fのマイクロ波を照射する。交流ジョセフソン効果によって、接合部に流れる電流-電圧特性は階段状に変化し(プリント資料の図を参照)、そのn段の階段電圧は
上式には、材料の寸法などの機械的数値が入っていない。周波数fだけを精密測定すれば、物理的に不変な定数h/(2e)だけで電圧を決定することができる。
(b) [名前] 量子化ホール抵抗標準
[原理] 量子化ホール素子のホール抵抗RHは、磁界Bに対して階段状に変化する特性を示す。また、そのホール抵抗RHの値は
のように、物理定数(h/e2)の整数i分の1の値を示す。この原理に基づいて、ホール抵抗RHを抵抗標準の提供手段として用いることができる。
(c)[名前] クロスキャパシタ
[原理] クロスキャパシタは、講義資料(p.8)の図に示すように、4本の円筒導体棒からなっている。対向する2本の導体間の容量を測定し、他の2本はガード電極として用いる。対称な位置に配置することにより、各電極間の容量は、
の関係になる。長さlを正確に測定すれば、容量を決めることができる
2.電圧測定に関する以下の設問に解答せよ。
(1)測定範囲を拡大するために,倍率抵抗Rを直列に挿入する。電圧計の端子電圧はVM=RAV/(R+RA)、測定すべき電圧をV,必要な電圧倍率を N=V/VM とすると倍率抵抗RはR=(N−1) RA、また、測定端子からみた電流計の入力抵抗は,R in= NRA。
(2)テブナンの定理より信号源の等価電源電圧V0と内部抵抗R0は次式となる。
電圧計接続前の端子電圧は上式のV0、電圧計接続後の電圧Vは
以上より、電圧計を接続したことによる誤差は次式のように求められる。

(3)零位法の原理を用いた電圧計には、電位差計がある。
電位差計は、測定電圧を可変で既知の電圧と平衡させて,平衡がとれた時の既知電圧から未知電圧を求める方法である。講義資料p.24の図に示した電位差計の場合、可変で既知の電圧を作るのに、電池Eから電流Iを抵抗Rに流し,その一部 Rの両端に電圧Esを作っている。検流計Gが零を示すように,抵抗器のブラシを動かしてαの値を調整して平衡をとったとき,
からE0測定する。電圧測定の感度は,検流計の感度まで,正確さは既知の電圧の正確さまで向上させることができる。平衡したとき,被測定回路から電流をとらない。従って,負荷効果が零,いいかえれば測定器からみた抵抗が無限大の,理想的な電圧測定法である。
3.以下は雑音の混入を防ぐための方法を列挙したものである。(1)〜(4)の各々について、どのような雑音がどのような理由で防げるのか説明せよ。
(1)トランスを使って信号源インピーダンスを変換する。
巻線比nのトランスの1次巻線側に信号源を、二次巻腺側に負荷を接続することによりインピーダンスを1/n2に変換することができる。信号源インピーダンスが小さいほど、外部からの混入雑音(導電結合、静電誘導、等による外部雑音)の誘導が少ない。このため、信号源と負荷の間にトランスを接続して信号源インピーダンスを低くすることにより、雑音の影響を受けにくくすることができる。
(2)測定系の接点間の温度差をできるかぎり小さくする。
銅線を介して電圧計を接続すると、電圧計の銅線の端子間、銅線と金属間にもそれぞれの接触電位差が生じる。これらの接点間に温度差がある場合には全体として熱起電力が生じ、直流的な雑音になる。従って、熱起電力が測定に影響する場合には、測定系の各接点間の温度差をできるかぎり小さくする。
(3)より線や同軸ケーブルを用いて信号線を配線する。
・鎖交磁束をできるだけ少なくするために回路のループ面積をできるだけ小さくする、・信号線をよじるなどして鎖交磁束を相殺させる、・雑音源および計測系にできるだけ開磁路をつくらない、などの対策をとることにより、電磁誘導による雑音の混入を抑えることができる。
(4)図3のように、信号源、信号線、測定器の3者をアース(抵抗ゼロの導体)に接続する。
図の各々のシャーシには電力線などの雑音源との間の浮遊容量、漏れコンダクタンスを通して雑音が誘導される。また、建物の鉄骨などの周囲の導電性構造物からも同様に雑音が誘導される。図の点A,B,Cを抵抗ゼロの導線で結び、各点の電位を等しくすれば、雑音電圧はショートされることになるので、外部雑音を防ぐことができる。
4.オペアンプに関する以下の設問に解答せよ。
(1) 仮想ショートの条件Vs=0を用いると、V1/R1,V2/R2(I1=-I2)。すなわち、
(2)コンデンサの両端の電圧Voは、コンデンサに流れる電流 Ifの積分であり、Vo=(1/Cf)∫If dt。一方、入力電流は、Ii=Vi/Ro , Iiと-Ifは等しくなければならないから次式が得られる。
(3)Voの極性は同じであり、かつVs〜0であるから、増幅率は1である。すなわち、V0=Vi。この場合、+入力端子から、 端子の間は同電位のためViが加わっても電流は流入しないから見かけの入力インピーダンスZiはきわめて高くなる。また、負荷にどのようなインピーダンスが接続されても、VoはつねにViに等しい電位を保つから見掛けの出力インピーダンスZoはきわめて低くなる。ボルテージフォロア回路は、外部雑音の混入を少なくするために、信号源の信号源インピーダンスを高インピーダンスから低インピーダンスに変換する目的に使うことができる。