「日朝交渉の先行はあり得ない」(下)

田中均・元外務審議官インタビュー

中国を動かすことができる方策は。

 「中国は今、大きな岐路に立っている。既に一枚岩ではない。国内の権力統制が徐々に難しくなっている。トウ小平氏が描いた中国は確実に『牛の角をただす』ことだった。中国は諸外国との関係を通じて成長してきた。しかし、最近は明らかに方針の転換があった。特にリーマン・ショック以降、中国は自力でやっていけるという大きな錯覚をした。特に軍はそうだった。わたしは外国で開催されるセミナーによく出席するが、中国の現役軍人が党・政府の指導者と明らかに異なる意見を述べるのを最近、頻繁に目にした。軍を確実に統制できなくなった証拠が随分表れている」

証拠とは。

 「ステルス機の問題がそうであり-。それ自体がどこまで事実かは別として、そういうことが立て続けに起きている。南シナ海問題で中国軍は『国家の核心的利益だ』と言った。この地域ではベトナム、フィリピンなどと領土紛争が多い。戦争が起きることもあり得る。核心的利益だと言ったのは、南シナ海が台湾と同等の地位だということだ。東南アジア各国は強い警戒心を持つようになった。昨年の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)でも米中間で南シナ海問題をめぐる激論が展開された」

中国が孤立感を感じるとすれば。

 「米国と日本のすべての行動は中国に対する反応だ。日本と韓国も接近しているではないか。しかし、中国はソ連ではない。孤立させることもできず、孤立させてもならない。国際協調的な中国をつくるため、域内に2国間、3国間の多彩なネットワークが必要だ。中国と対立する形態も、中国を取り込む形態もつくり、圧力を加えるべきだ」

田中均氏

 日本の代表的な国際戦略専門家として知られ、外務省アジア大洋州局長として在任中の2002年9月に行われた小泉純一郎元首相の訪朝に先立ち、中国・大連で「ミスターX」と呼ばれる北朝鮮側の交渉相手と約30回にわたる秘密交渉を行うなど、日朝国交正常化の推進などを柱とする日朝共同宣言の舞台裏の責任者だった。05年に外務審議官を最後に外務省を退官し、その後は日本総研国際戦略研究所理事長、日本国際交流センターシニアフェロー、東大客員教授などを務めている。

東京=辛貞録(シン・ジョンロク)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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