「このファンドは極めて周到な調査に基づく長期戦略で株を買い進めているように見えます。たとえばみずほFG、三菱UFJFG、三井住友FGなどメガバンクの株式を合計6億株ほど保有しているが、これはメガバンクが企業情報の宝庫だから。特にみずほFG傘下の銀行には、大量の中小企業の口座があるとも言われています。
株式を一定以上保有した上で役員を派遣、役員会にファンド側の人間を毎回出席させれば、様々な情報が入手できる。たとえば中小企業を買収したいときも、『どこの資金繰りが厳しいのか』『工場は老朽化していないか』など一社一社を調べる手間が省け、スピーディに進められる可能性がある」
近年では家電量販店のラオックスやアパレル大手のレナウンが中国資本の傘下に入るなど、中国企業による日本企業の買収は盛んになっている。中国マネーが日本の技術を狙っているのは周知の事実だが、そうした中で、OD05はどんな技術を求めているのか。
「中国は四川大地震以来、直下型地震の被害をどう小さくするか悩んでいる。さらに中国政府はいま、地下鉄インフラ網の建設を急いでいる。そうした点から見ると、鹿島などのゼネコンが持つ超高層建築技術、地下・地中における独自技術は喉から手が出るほど欲しい。しかも日本のゼネコンは大株主である創業者一族が高齢化し、いずれ相続の問題が生じる。OD05はそのあたりまで見越しているのが、非常に賢く見える。
さらに三菱重工、東芝、日立製作所は世界有数の原子炉技術を持っている。原子炉開発で世界覇権を目指す中国にとって、日本の3大メーカーの大株主になることは格好のステップになりえる」(中国系ファンドに詳しいコンサルタント)
ほかにも中国では河川、水道水など「水の公害問題」が深刻になっているため、前出の日東電工と旭化成が共通して持つ「水処理膜技術」は今すぐにでも欲しいはず。東レ、帝人などが持つ炭素繊維技術も、航空機製造で世界の覇権を狙う中国には魅力的に映っていることだろう。
「実は胡錦濤総書記の後継者とされる習近平中央軍事委員会副主席が'09年に日本を訪問した際、唯一視察した日本企業はトヨタやパナソニックではなく、産業用ロボット生産で世界一の安川電機でした。ここから中国がロボット産業を国として発展させたいという意思が読み取れる。
安川電機こそ入っていないが、OD05の投資先に産業用ロボットに強いファナックがあるのはそうした背景によるものでしょう」(田代氏)
三菱地所に三井不動産も
さらに中国マネーが狙っているのは、日本の技術だけではない。日本の不動産を次々と買い集めていることは多く報じられているが、実はOD05の投資にもそんな「資産狙い」が透けて見える。
「丸の内の不動産を一手に握る三菱地所のほか、東京ミッドタウンなどを持つ三井不動産、港区に多くの物件を抱える住友不動産と大手デベロッパー3社に投資しているのはその保有不動産狙いでしょう。
総面積4万ha以上もの森林を北海道や四国に持つ住友林業が投資先に入っているのも、チャイナマネーが日本の森林資源を買い漁っていることの一環と見ることができる」(中国経済に詳しいエコノミスト)
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