2004/08/14(土)ー工事中(勉強中)だなもしー8月31日までに完成予定



「萌える」が登録商標に

 最近知った事なのだが「萌える」が商標として登録されているみたいだ。
「萌える」という言葉は確かにまだまだなじみは高いとは言えないがそれでも、世間一般の認知度としてはすでに十分な程の公用性を得ている単語だと客観的に捕らえることが出来るだろう。しかも今が「売り」時な単語とも言う事ができる。
 全ての単語が商標として認めれれるわけではないらしいが申請すればかなりの広範囲に渡って商標登録が認められる事も事実みたいだ。
 こういう「単語」が商標登録されてたった一つの個人・法人によってかなりの範囲に渡ってコントロールされてしまう事実はあまり見ていて気分が良くない。表現や言葉に対する侮辱とも取る事が出来る。
 又、単語の持つ意味や流通度を考えずに商標登録を認めてしまう事実は法律がどこかおかしいのではないかと考えてしまう。
もちろん商標登録自体の有用性は認めるところではあるのだが。

申請する方が悪いのか認める国が悪いのか・・・

下の表は特許庁の特許電子図書館で「萌え」で検索した場合の結果

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項番 出願/登録番号 商標
1. 登録3064304 萌える大地
2. 登録3189422 萌える大地
3. 登録4001533 花萌え
4. 登録4248988 萌えよ剣
5. 登録4310910 も\萌え〜る
6. 登録4469951 花萌え
7. 登録4624674 もえか\萌え花
8. 登録4635987 [もえか]∞萌え香
9. 登録4745449 萌える
10. 商標出願2003-080115 萌える
11. 商標出願2003-080370 萌えるシリーズ
12. 商標出願2003-111567 萌え
13. 商標出願2004-047317 キャラ萌え隊
14. 商標出願2004-056483 萌える
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規制範囲

 こういう単語が商標登録された場合、規制はどうなるのだろうか?そもそも商標権とはなんなのだろうか?
気になったので調べてみた。

 簡単に説明すると、商標権とは、(商標+商品)の組み合わせによって、その商標が保護されるという制度みたいだ。
尚、保護とは商標登録された商標に2つ権利が発生することを示す。
「1.積極的に商標を行使できる権利」 と 「2.他人に商標の使用を止めさせる権利」がそれだ。
1と2では適用される商品の範囲が違う事も頭においておこう。

 言葉だけを追っても理解は難しいので上表の項番9、登録4745449(萌える)を例に考えて見ることにする。「萌える」の登録は


【商標(検索用)】 萌える
【標準文字商標】 萌える
【称呼】 モエル

【付加情報】 標準文字

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
16 印刷物,出版物,書籍,雑誌,小冊子,しおり,カレンダー,カード,漫画本,グリーティングカード,ポスター,シール,説明書,書画,その他の印刷物,その他の出版物

となっている。ここで下の表を見ると、権利者から見ればピンク色の部分が「1.積極的に商標を行使できる権利」の範囲となり、黄緑色の部分が「2.他人に商標の使用を止めさせる権利」の範囲となる。我々側からみれば両方が使用不可の範囲だ。

   同一商標 類似商標 非類似商標
同一商品 使用不可 使用不可 使用可
類似商品 使用不可 使用不可 使用可
非類似商品 使用可 使用可 使用可

 ちなみに、同一の商標とは「萌える、もえる、モエル、MOERU、等概念的に商標と同一とみなされる物全て」又、同一の商品とは「印刷物,出版物,書籍,雑誌,小冊子,しおり・・・」がそれに当る。類似の商標とは「一般的に考えて「萌える」という言葉と混同されるもの全てという事ができる。」、類似の商品は少しややこしくてガイドラインが出ているが、上にないもので例をあげれば「カタログ、雑誌、地図、ポスターカード、パズル等」がそれに当るだろう。結局紙の上に表現された全てが規制の範囲になるかもしれない。

---------用語---------

※商標:商品やサービスにつける文字、マーク、図形等の事。財産の一部のみなされるので譲渡したり、貸与したりする事も出来る。
※標準文字商標:平成9年4月1日から商標法にあらたに取り入れたれた制度であり。出願者が特に商標に特別な形態を指定しない場合、特許庁が指定する文字、書体において商標の登録が受けれるという制度。(単純にいうと、いままでは商標とはかならず書体・形態を指定しなければならなかったが、この制度によって単なる「テキスト」でも登録できるようになった。)
区分:指定された商品が属する分類の事、区分を越える場合は一部の例外を除いて商標権を行使できない。又、同じ区分内で同一、類似の商標は登録出来ない。上の例では区分第16類(紙、紙製品及び事務用品)となっている。

---------おまけ---------

 商標の制限の範囲が紙の上に表現された全てであったとしても、「萌える」と書いた紙がすぐに権利の侵害となるわけでもない。
そこで、自分なりにどういう場合が権利の侵害となるのか考えてみた。
 尚、たんなる遊びですのであまり真面目に見ないで下さい。それと重ねて言いますが私の勝手な判断ですので・・・・

例(標準書体の場合)
判定
備考
「萌える草木」というタイトルの植物図鑑
ダメかなぁ・・
実際の損害が出てない場合は商標権者が権利を行使しない可能性があるが、商標法を見る限り侵害行為と言わざるを得ない。
「萌えるマーメイド達」とでかでかとかかれた宣伝のポスター
ダメっぽい
商用でない場合は問題にならないだろうが(工業所有権全般はその権利の所有者の利益を害さない限り、営利目的と営利目的での争いを前提としているので)、宣伝のポスターとなるとやはり侵害行為とみなされるのではないだろうか。
漫画の吹き出しに「萌えるメイドさん」という記述
全然OK
商標権者に損害を与える行為とは思えないし、なにより表現の自由の範囲内。
小説のタイトルで「シスターカクテル〜萌える12人の妹〜」という風にサブタイに使われる場合
微妙だけどOKかなぁ
「シスターカクテル」がメインのタイトルであり「萌える12人の妹」というのを付随的な表現と考えれば、一般的に見て「シスターカクテル」という小説を他の商品と混同する可能性は低い。よって問題なし。但し「萌える12人の妹」というのを必要以上に強調したり、メインのタイトルより大きい文字で表示すれば侵害になる可能性あり。
「萌えるコーヒー豆」という名のコーヒー豆
問題なし
パッケージには「萌える」が印刷されているが、コーヒー豆自体は別の区分なので印刷はコーヒーを売るための正当な行為と考える事が出来る。
「萌えるマリア様」というビックリマンシールのキャラ
大丈夫でしょ
袋をあけないとどのキャラが入っているか判別できないので損害を与える行為とはならない、又、ビックリマン自体も十分に著名なシールと考えられるので、それを他の何かと混同する可能性は低い、よって大丈夫。と思う・・・・但し、100枚中99枚とかが同キャラだとしたら侵害になるかも。
全然萌えない「萌える電話帳」というタイトルの電話帳
ダメ
まぁ、ダメでしょう。
凄く萌える「萌える電話帳」というタイトルの電話帳
う〜〜む
「萌える」というのが電話帳の性質であるという事が証明されればあるいはセーフかも・・・(w(物の性質をあらわす言葉には商標権は適用されない為)

商標で認められる言葉の範囲

 私がこの話を聞いたとき一番驚いたのは「萌える」などという一般的な単語でも商標を取る事ができるという事実だ。

異議について

 もちろん、納得のいかない商標登録に全く対抗手段がないわけではない。


思考1(プロジェクトタイムマシン)

 プロジェクトタイムマシンのホームページに「萌える」の商標に関する記述がある。
このホームページの一番下に

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

「プロジェクトタイムマシン」「萌えるシリーズ」「萌えるネット」は商標です.
「萌える」はプロジェクトタイムマシンの使用する登録商標です. 個人やサークルで行なう創作活動に於いては,自由に使用して頂いて構いません. 前述の二次使用と同様,連絡頂ければ紹介させて頂く事も御座います.所謂商業ベースの場合は,商標権者にお問い合わせ下さい(プロジェクトタイムマシンは商標権者ではありません).

<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

 という記述がある。
 憶測で斜で嫌な見方をしてしまえば、プロジェクトタイムマシンの関係者が商標権者をしていて、個人レベルでの反感を買いたくないのでとりあえず個人の活動は放置(めんどくさいしね)、但し、商業ベースで「萌える」を使う場合はお金を取りますよ、と言っている様にしか聞こえない。人の良さそうな顔をしているが結局規制しようとしているのだ。
 もう一つの見方は商標権者とプロジェクトタイムマシンは無関係ですでに「萌える」が商標として販売されている場合だ(商標権者とプロジェクトタイムマシンの間で契約が結ばれ、萌えるの「専用使用権者」としてプロジェクトタイムマシンがその権利を取得していると考える)。こちらの場合はすでに「萌える」という文字が売られているということになる。気分の悪くなる話だ・・・
 加えると、個人レベルでの使用は今はいいけど将来どうなるかは商標権者(専用使用権者)の胸の内にかかってくるわけだ、なんだか気持ち悪い。「萌える」は本来誰の物でもないのに・・・

思考2(言葉狩り)

 一番怖いのは「萌える」という単語自体が消滅してしまう事だ、「商標出願2004-056483」や「商標出願2003-111567」が登録されてしまえばかなりの範囲で「萌え」や「萌える」がフリーに使えなくなる。商標権者がどのような考えで商標登録(申請)しているかは今は分からないが、仮に「ビジネス」として十分に成り立つ事が証明されれば、規制を強いてくるのは間違いない。結局

 「うぜぇ」 → 「もう、使わねぇよ。」

という風になってしまうかも知れない。バカらしい話だが100%ないとも言い切れない。他人のふんどしで相撲を取ろうとした奴がいたために言葉自体が消滅してしまうとしたら、なんだか遣り切れない。
 又、同じような事を真似をする人間が沢山出てくるかもしれない。そうでなくても、一般的な単語で商標を取る事が当たり前になれば自分達の商品を守るためにいちいち単語一つ一つについて商標を申請する必要性が出てくるかもしれない。結果、言葉や表現は非常に息苦しいものになってしまう、残念だ。

思考3(商標は落とし穴?)

 本来権利を守る為の商標登録が「落とし穴」としか思えない役割をしている。
誰も所有していない誰でも入れる広場(但し、管理者は日本国政府)に落とし穴を掘っておいて「あなたは落とし穴に落ちたので100万円払って下さい!」と言われたって誰も納得できないだろう。
引っかかった方から見れば、「こんなとこに穴を掘るなんて酷いじゃないか!」と反論したいが、掘った方は「ここに落とし穴を掘る事は日本国政府によって認められています。」といった具合だ。
 結局、国民に「法律は資本主義の味方でしかないんだな」などと言う諦めに似た感情を抱かせる。
言葉を誰かが管理しなければならないというのは理解できるが、同時に言葉は誰によっても所有されるものではないといった認識が必要だ。使用頻度が高い単語ならなおさらだ・・・・

最後に

 私自信法律の専門家ではないので、間違って解釈している事は沢山あると思います。それにかなり斜めな見方をしてるので読む人によっては気分の悪くなるような記述があったかもしれません。ただ、この話を聞いたときに「どこかおかしいんじゃないの?」と思ったので、自分の考えをこのような記事にしてみる事にしました。問題、提案、指摘、苦情あればメール下さい。このページに書かれ全ての内容を変更する用意があります。
 尚、議論したい方はこちらに行って下さい。

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