北朝鮮取材に命を懸けた「秘密記者」たち

英誌エコノミスト報道

 「『リムジンガン(臨津江)』(北朝鮮内部の記者たちが作る時事雑誌)は記述により、北朝鮮の体制が挑戦を受けているということを象徴的に示している」

 イギリスの有力経済週刊誌「エコノミスト」は23日、「(北朝鮮の英字週刊誌)平壌タイムズではない、命を賭けたジャーナリズム」という記事で、生命の危険を冒し北朝鮮の実態を外の世界に暴露する北朝鮮向けメディアの活躍を詳しく報道した。

 この雑誌が重点的に紹介した北朝鮮メディアは「リムジンガン」だ。「リムジンガン」は北朝鮮で暮らしている記者たちの寄稿により、日本で作られている時事雑誌だ。外の世界に北朝鮮の実態を知らせるため、2007年に創刊(隔月刊)された。現在、韓国語・日本語・英語版が発行されている。エコノミスト誌は「リムジンガン」について、「北朝鮮の人々が書く記事を、外部の世界の読者のために提供する唯一のメディア」と定義している。

 「リムジンガン」では工場労働者から公務員まで、さまざまな経歴を持つ記者8人が活動している。彼らは中国で極秘に録音・録画技術を学んだ後、北朝鮮に戻り、命を賭けてメディア活動を行っている。彼らが極秘取材した動画・写真などは中国を経て雑誌発行機関のアジアプレス本社がある日本に渡る。

 「リムジンガン」取材チームは、骨と皮ばかりの姿のまま、冬の荒れ野で食糧を探し求める20代女性の動画を取材、全世界に大きな衝撃を与えた。この映像は、イギリスの日刊紙「デイリー・テレグラフ」を通じ報道されたのに続き、韓国でも上映された。エコノミスト誌は「北朝鮮の実態を知らせる報道内容は、メモリー・スティックに保存され国境を越えることも、(中朝国境の川)鴨緑江の北朝鮮側で電波が届く中国の携帯電話を通じ送ることもできる」と、閉鎖的な北朝鮮体制が技術の進歩により脅かされているとしている。

 これについて、「リムジンガン」編集者の石丸次郎アジアプレス・インターナショナル大阪事務所代表は「北朝鮮内部の記者たちと接触を続け、写真・映像・印刷物など証拠を確保、うそをついてはならず、報道により取材源が被害を受けないようにするなど、記者として必要な基礎教育を続けている」と言った。

 また、エコノミスト誌は仏教財団が運営する「良き友たち」、北朝鮮向け短波ラジオ放送「開かれた北朝鮮放送」「自由北韓放送」といった韓国国内の北朝鮮向けメディアの活躍も共に紹介した。開かれた北朝鮮放送は、公務員である北朝鮮内部の情報提供者が提供した情報を基に、「後継者・金正恩(キム・ジョンウン)氏の贈り物を積んでいた列車が脱線した」というニュースを報道、自由北韓放送は北朝鮮内の情報員3人が衛星電話を持ち、身元が明らかになるリスクを下げている、とエコノミスト誌は報道している。

 脱北者たちが中心となっている自由北韓放送は、2008年に国際メディア団体「国境なき記者団」(RSF)から「今年のメディア賞」を受賞している。

パリ=金洪秀(キム・ホンス)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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