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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】自衛隊員監視 恣意的運用ではないのか
防衛省の防諜部隊、「自衛隊情報保全隊」が陸上自衛隊OBの佐藤正久自民党参院議員や田母神俊雄元航空幕僚長の講演に潜入し、現職自衛官の参加状況を監視していた問題が表面化した。
佐藤議員らの講演では参加した自衛官の氏名がチェックされ、講演内容と併せて報告書として提出されたという。
佐藤氏や田母神氏が民主党政権の防衛政策に批判的な発言をしていることが監視対象なのか。これは思想統制にほかならず、組織の恣意(しい)的な運用というしかない。
機密情報の流出や自衛隊へのスパイ活動の防止が、保全隊の役割だ。それがなぜOBの講演を監視する必要があるのか。本来の任務とかけ離れた活動は、自衛官の思想・信条の自由を侵害していた疑いを持たれてもやむを得まい。
防衛省は昨年11月、民間人の政権批判を封じる「事務次官通達」を出したことでも、情報統制や言論封じだと厳しく批判された。思想や言論の自由など、民主主義国家の根源的な価値を損なう問題が相次いで浮上するのは、極めて危険な兆候である。
異論や批判は認めないといった民主党政権の政治判断があるなら断じて許されるものではない。
枝野幸男官房長官は「報道されたような事実があったとは認識していない」と述べたが、今回の保全隊の監視活動問題は徹底調査すべきだ。とりわけ、北沢俊美防衛相がこの問題にどう関与していたかを明らかにする必要がある。
昨年の事務次官通達は、自衛隊の後援会幹部による「民主党政権は早くつぶれてほしい」との発言に反発した北沢防衛相らが主導して出し、自民党などの撤回要求にも応じていない。自衛隊員の政治的行為は自衛隊法などで制限されているとはいえ、政権批判を行う人物を遠ざけ、思想や言論の自由を侵すことは許されない。
自衛隊情報保全隊は平成21年に陸海空3自衛隊の情報保全隊を統合して新たに編成され、約千人の隊員を擁する。外部の働きかけから自衛隊部隊を守るため、資料・情報収集などに当たっている。
16年前、オウム真理教信者の現役自衛官がハイテク技術を盗み出そうと三菱重工業の施設に侵入、逮捕される事件があった。こうした外部組織、団体からの浸透を防ぐことこそ、保全隊の存在意義だと改めて肝に銘じるべきだ。
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