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きょうの社説 2011年1月25日
◎通常国会開会 予算修正で歩み寄れるのか
菅直人首相が政権の命運をかける通常国会が召集された。菅首相は施政方針演説で、社
会保障と税の一体改革など基本的な国づくりの理念と政策の実現に全力を挙げる決意を述べ、そのために与野党協議に入ることや、当面の最大の課題である2011年度予算案と予算関連法案の速やかな成立を呼びかけた。その鍵となるのは、首相が施政方針演説とそれに先立つ党内演説で強調した「熟議の国会」、「建設的な国会」をめざして与野党が歩み寄れるかどうかである。参院で野党が多数を占める現状では、衆院優位の原則で予算案が成立しても、関連法案 が参院で否決されれば、予算は執行できず、菅政権は苦しい立場に追い込まれる。このため、菅首相や岡田克也民主党幹事長らは、早々と予算案と関連法案の修正に応じる余地があることをにじませている。 政府・与党として異例の対応だが、民主党のマニフェスト(政権公約)自体の行き詰ま りが明らかなことも考えれば、野党の要求を取り入れて予算案と関連法案を柔軟に修正する政治決断があってよいし、野党も国民の生活、経済に配慮し、成立へ妥協することを考えてよいのではないか。 政府予算案が与党の譲歩と政策変更で大幅に修正されることになれば画期的であり、そ の意味で今国会は二大政党政治の大きな実験の舞台ともいえる。 菅首相は施政方針演説の前段で、包括的な経済連携の推進と「農林漁業の再生」に力点 を置いた。その中で例えば、マニフェストに沿って、農地の集約・大規模化と農業者所得補償の拡大を強調したが、一律の所得補償はかえって農地の集約の妨げになるという見方が多い。予算案の見直し点の一つに挙げられよう。 政権党が予算案とマニフェストを変更するのなら「国民の信を問うべきだ」という野党 側の声は大きく、自民党などは解散に追い込む構えを強めている。野党の対応次第で国会運営が行き詰まる可能性も大きく、先行きは予断を許さないが、政治抗争で国の意思をいつまでも決められない状態が国民にとって最も不幸なことを、与野党は銘記してほしい。
◎海の幸のブランド力 北陸一体で発信に工夫を
北陸三県が共同でJR中央線(東京)に出した年末年始の車体広告が、同じようなズワ
イガニの写真に石川県は「加能ガニ」、福井県は「越前ガニ」とそれぞれのブランド名を表記したことに対し、北陸信越5県議会の議長会議で「見た人が混乱し、調整が必要」と注文がつく一幕があった。その場で具体的な対応への言及はなかったものの、海の幸のブランド戦略や発信策を、より大きな地域の視点から見直す余地はある。東京・築地市場での産地標示疑惑を受け、氷見漁協では「ひみ寒ぶり」の名称で地域団 体商標登録をめざすことになった。高値で取り引きされながら、あいまいだった氷見ブリの定義を明確にする狙いは分かるとしても、そもそも魚に野菜と同じような「産地」の概念を当てはめるのは限界がある。 富山湾を回遊するブリは氷見市場に持ち込まれれば氷見ブリ、能登町なら「宇出津港の と寒ぶり」となり、これまでは奥能登の定置網で捕れたブリも氷見へ流れていた。一方、ズワイも同じ漁場で捕っても福井県の港なら「越前ガニ」、石川なら「加能ガニ」である。 水揚げ後の品質管理などで地域ごとの工夫はみられるが、ブリやカニなど共通するブラ ンド品については、漁協、自治体などが知恵を絞り、一体的に売り込む視点があっていい。定置網が集中する能登内浦から氷見沖を「平成ぶり街道」としてアピールするのも一案である。 過日の県議会議長会議では、福井県から「石川も越前ガニにしたら」との声もあった。 「越前ガニ」の名称はすでに16世紀の古文書でも確認されている。長年にわたってブランド化に取り組んできた自負は理解できるとしても、競争が過熱するあまり、差別化が排他的になっては広域連携の機運は生まれないだろう。 首都圏や海外でのキャンペーンなどでは連携を密にし、地域間競争のエネルギーを相乗 効果に変えていく。食のブランド化は観光戦略そのものであり、それらを「北陸」の枠組みで効果的に展開していくことは、北陸新幹線開業へ向けた重要な課題といえる。
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