年産2万トン、全国シェア6割を誇る広島県特産のカキが、旬を迎えた。広島港や呉ポートピアなど県内4カ所にお目見えしたビニールハウスの屋台風「かき小屋」がにぎわっている。
殻付き1キロ千円、セルフ方式で炭火焼きのかきを味わえるのが魅力だ。ほかの魚介類もあり、飲料の自販機も備える。「瀬戸内・海の道構想」の一環として、県が進める「オイスターロード」(かきの道)の実験店舗である。
当面、3月末まで毎日営業。県の音頭で事業者や関係市町で協議会を発足し、事業化の可能性を探っている。広島かきのブランド力アップにつないでほしい。
広く知られる広島かきだが、地元消費の割合は小さい。広島を訪れる観光客から「もっと手軽に食べたい」との要望も強いという。
そこで、港や浜辺の近くに簡素なかき小屋を連ね「産地ならでは」のイメージを強調。販売量を増やすのが県の狙いだ。地産地消の拡大と観光振興を両立させようという意気込みが伝わる。
広島市中区の飲食業者は、九州の各地でかき小屋が人気を集めていると知り「こちらこそ本場なのに」と奔走。県助成100万円を含む事業費2千万円でこの実験を引き受け、昨年10月に南区の宇品海岸で1号店を開いた。
以後、三原市と呉市でも実験店舗を開設。尾道市の水産関連業者が加わった。廿日市市や海田町などでも準備が進む。県が計画する8〜10カ所は実現できそうだ。
客の入りは、1号店が月1万2千人の見込みを上回る1万5千人。他店もほぼ目標通りという。
これまでに各店で集めたアンケートでは「また来たい」とか「店を増やして」といった声が多かった。時宜にかなった試みと評価できる。
ただ本格的な事業展開へのハードルは高い。
港の周辺に広がる公有地で新たに建物を設けたり営業活動をしたりするのは本来、厳しく規制されている。実験店舗を常設化するには規制の見直しが必要になる。かといって民有地では費用がかかる。通年営業が難しいかき小屋では、採算が取れそうにない。
広島市が京橋川沿いなどに設けるオープンカフェを参考にしたい。国のモデル事業としてレストランなどの営業が特例で認められた。期間は6年。かき小屋も期間延長を検討できないか。
衛生管理の基準作りや宣伝に取り組む協議会の役割は大きい。
全国出荷を重視する生産者団体が例年、地元で催しているかき祭り。これと連動したイベントを計画するなど、産地との協力を強めてはどうだろう。
呉の音戸ちりめん、尾道の「でべら」など各地の特産もアピールしたい。瀬戸内のイメージをより具体化できよう。
実験とはいえ収益面をきめ細かくチェックする必要がある。シーズン以外でもかきを食べられるようなメニューや、利用しやすいアクセスを工夫してほしい。
【写真説明】「かき小屋」では焼きがきを味わえる(広島市南区)
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