事件【産経抄】1月21日2011.1.21 02:35

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【産経抄】
1月21日

2011.1.21 02:35

 「春の海」などで知られる箏曲(そうきょく)家の宮城道雄は、8歳のときに視力を失った。あるとき作家の林芙美子との対談で、やはり全盲で、バスで通う弟子の話題になった。停留所の場所がどうしてわかるのか。宮城によると、まず1台目がどこに停(と)まったのか音で確かめて、次のバスを待つのだという。

 ▼「勘だけでしょうね。目の悪い人で怪我(けが)なすったということ、あまり聞きませんものね」。こう話す林だけではない。宮城のいう「目明き」は、視覚障害者がどれほど危険にさらされているのか、軽視しがちだ。

 ▼東京・JR目白駅で16日、全盲の武井視良(みよし)さん(42)が、ホームから転落し、山手線にひかれて亡くなった。都内に住む全盲者を対象にしたアンケートによると、何と約7割が転落した経験を持つという。

 ▼大阪でも4年前JR桃谷駅で、視覚障害者の夫婦がホームから転落して、大ケガを負っている。そのとき小欄は、事故防止の決め手となるホーム柵の設置を急げ、と書いた。JR東日本は山手線全駅に設置する方針だが、完了まで7年もかかる。今は駅員や乗客一人一人の細かな目配りしか、事故を防ぐ手だてはない。

 ▼武井さんは、音の出るボールを打ち合う「ブラインドテニス」の名選手で、海外普及に奔走してきた。明るく気さくな人柄だったという。一方宮城も、「楽聖」のイメージとは裏腹の茶目っ気たっぷりの性格だったらしい。

 ▼親友の内田百●(ひゃっけん)の勧めで書いた随筆のなかで、「今はもう眼(め)が明きたくない」と言い切った。その宮城は昭和31年6月、急行列車から転落死している。いつになったら、視覚障害者の鉄道事故がゼロになるのか、あの世で地団駄(じだんだ)踏んでいるに違いない。

●=門に月

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