日本経済の立ち直りが不透明ななかで、春の労使交渉が始まった。連合は一時金や諸手当を含めた給与総額の1%引き上げを求めている。だが日本経団連は、これを過大な要求だとし、議論は最初から平行線だ。
企業の労使は目先の賃金以外に重要な課題を抱えている。専門性のある人材の確保やグローバル人材育成の制度づくりでも労使の協力が欠かせない。企業の成長力を高めるよう実りある議論をしてほしい。
連合は2009年の現金給与総額が一般労働者の平均でピークの1997年から5.1%減ったことを受け、向こう5年間で減少分を取り戻すとしてまず1%の引き上げを求めた。これに対し経団連は、賃金より雇用を重視すべきだとの主張だ。
企業収益は改善しつつあるとはいえ、昨年7~9月期の全産業の経常利益は直近で最も多かった07年1~3月期を4割近く下回っている。デフレや円高で経営環境は厳しく、経営側が賃上げに慎重になるのはやむを得ない面がある。
一方で国際競争に勝つには非正規の人たちは戦力として欠かせない。連合は製造業派遣などを原則禁止とする労働者派遣法改正を支持している。わたしたちは企業の競争力を損なう法改正に反対だ。そして非正規社員をさらに活用していくためにも、処遇改善が必要だと考える。
各企業は労使交渉で、一般的には労働組合員ではない非正規社員の処遇の見直しも協議してほしい。
総人件費は限られるものの、賃金を抑えすぎると消費も回復しない。好業績の企業では、正社員、非正規社員ともに賃金引き上げを話し合ってもいいのではないか。
労使に求めたいのは、企業が利益をあげていくには何が必要かという中長期の視点の議論だ。製品やサービスの付加価値を高めるには、専門性の高い人材を国内外から広く集める一方、実績ある技術者の流出を防ぐ工夫が要る。年功型賃金から成果や役割に応じた処遇への抜本的な改革を急ぐ必要がある。
昨年と違い今年は経営側が定期昇給実施に理解を示すが、激しい国際競争のなかで勤続年数に応じ賃金が増える定昇制度には限界がある。経営側は制度見直しを提起すべきだ。
企業の重要課題はアジアなど新興市場の開拓強化である。労組の協力が得られると、海外事業を担う人材育成にも積極的に取り組める。
持続可能な企業年金制度の再構築という別の重要テーマも含め、労使は今後の企業経営を左右する課題についての合意形成を進めるときだ。
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