病気や発症の不安に苦しめられてきた人たちを思えば、早期の和解が望ましい。ただ、国が支払うことになる和解金の大きさに、立ち止まって考えざるを得ない。国民全体で負担しなければならず、その財源がはっきりしないからだ。
集団予防接種の注射器使い回しが原因としてB型肝炎患者らが国家賠償を求めた訴訟で、先行する札幌地裁が所見を示した。原告側は前向きに受け止め、国は受け入れる方向だ。全国10地裁で621人が提訴した集団訴訟が和解に向けて動き出す公算が大きくなった。
これまでの和解協議で、国は死亡した人の家族や肝がん患者らに最高2500万円を支払うなどの内容の和解案を示す一方で、肝炎ウイルスに感染していても症状が出ていない未発症者に対しては、和解金の支払いを拒んできた。
札幌地裁の所見は、患者や家族への和解金を上積みするとともに、未発症者にも50万円と、今後の定期検査費用など必要経費を支払うよう国に求めた。
厚生労働省によると、対象となりうるB型肝炎の患者は全国で約3万3千人、未発症者は約40万人。札幌地裁の所見に沿って和解が成立し、すべての患者や未発症者が提訴し和解すると仮定した場合、当面の5年間で約1兆1千億円が必要になる。
その後の25年間に、未発症者の10~15%で症状が表れ、病状が重くなる患者も出てくると想定すると、さらに約2兆1千億円が要る。計3兆2千億円は、国民1人当たり2万6千円ほどの負担になる。
この問題は、注射器を介した感染の危険が指摘された後も使い回しを放置した国の失政が原因だ。予防接種で不幸にして感染した患者を救うのは当然だ。集団予防接種によって感染症の流行を抑え国民全体が利益を得ており、国民全体で負担を分かち合う考え方には説得力がある。
ただ、次世代にも引き受けてもらう大きな額である。どこまでの負担が妥当で、どう賄うのか。30年にわたり担う国民に財源を明確にせず、国が支払いを約束するのは無責任ではなかろうか。まして、この支出を短絡的に増税に結びつける発言が政府から聞こえるのはおかしい。
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