穀物などの食糧価格が上昇している。主要産地の天候異変のほか、先物市場への投機資金流入が値上がりを加速していることも見逃せない。食糧高は飢餓人口の増大や新興国の政情不安につながる恐れがある。米国は商品先物の規制を強化するが、対応は緒に就いたばかりだ。先進国の政府は警戒を強めてほしい。
世界の穀物価格の指標となるシカゴ先物市場では先週、トウモロコシの価格が1ブッシェル(約25キロ)6.5ドル台まで上昇し、2008年6月の過去最高値7.6ドル台に近づいた。
現物取引が主体のコメを含め、穀物全体でみれば08年以前より需給に余裕はある。しかし、世界の穀物価格に強い影響力を持つ米国の先物相場の高騰が続けば日本の景気への影響も免れない。さらに、経済力が弱く、支出に占める食費の割合が高い国では深刻な問題を引き起こす。
米国が金融緩和を続ける中で膨らんだ余剰資金は、世界人口の増加と新興国の経済成長で需要の増える国際商品の市場に向かいやすい。
とりわけ農産物はトウモロコシと小麦、大豆の主要3品種を合わせても直近の先物売買残高が1160億ドル(10兆円)で、米原油先物の残高に及ばない。投機家にとって農産物は少額の投資で相場が動く、売買益を稼ぎやすい市場といえる。
実際、シカゴ先物市場で投機家のトウモロコシの買越量は08年の最も多かった時より2割も多い。大豆や小麦でも投機的な買いは膨らんだ。
価格の上昇が生産増加を促したり、過剰な消費を抑制したりする市場の機能はもちろん重要だ。農産物の輸出額が増え、アフリカなどの経済発展につながる側面もある。
しかし、農地や農業用水を確保し、食糧生産を増やすのには時間がかかる。短期間に市場への資金流入が膨らみ、価格が急上昇すれば弊害の方が大きくなる。
国連は昨年、慢性的な栄養不足にある飢餓人口が9億2500万人と過去15年で初めて減少すると予測した。08年に比べ食糧価格が下落したのが要因だが、高騰が再燃すれば飢餓人口は再び増えてしまう。
食糧高への不満も背景となり、チュニジアでは政変が起きた。所得格差の問題を抱える中国でも食糧高は社会不安につながりやすい。
米国は来月にも石油や金属、農産物の主要28商品で新たな投機規制を決める。ただ、生死にかかわる食糧が投資商品の金と同じ枠組みの規制でいいのか議論の余地がある。日本政府も発展途上国への影響まで踏まえ、食糧高対策を考えるべきだ。
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