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天声人語

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2011年1月19日(水)付

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 〈先生がニコっとして言う「がんばるな」私の中で「がんばれ」になる〉と北海道の高3の女生徒久島紗貴さん。東京の高1女子河合光葉さんは〈「頑張って」背中に掛かるその言葉時に重荷に時に翼に〉とうたう。今年も東洋大学から「現代学生百人一首」が届いた▼24回目となり、全国から6万余首が寄せられた。人生を一日にたとえるなら、明けゆく朝を生きる彼ら。逃げ足の速い青春を紡ぐ言葉は、三十一文字(みそひともじ)というより「サーティーワン」とでも呼びたくなる▼若い日に、友達が「人生」を教えてくれる。〈旧友が声変わりしてふと気づく違った道を歩む僕らに〉中3、三谷航平。ときに自分がくすんで見えることもある。〈夢語る友の横顔まぶしくて隣にいるのに遠く思える〉高3、藤島由紀子▼入選した100首のテーマは様々だが、家族を詠んだ作も多い。〈そばをうつ父の姿を眺めてる母の視線はどこかあたたか〉高2、中山芙美。〈「アレ取って」以心伝心「はい、どうぞ」25年の夫婦の絆〉高3、澤田知里▼とはいえ反抗期。〈ひとり見る夏の夕日のうつくしさ今日なら母に謝れるはず〉高1、石井優希。将来への心配に揺れもする。〈就活で不況の闇に呑(の)み込まれ嵐の波間を漂う九月〉高3、岩崎健悟▼だが、喜びを分かち合える幸せがある。〈泣きながら内定決まり一番に電話したのは大切な祖母〉高3、猪尾梓。小学生の部に〈おじいちゃんあんまりゆだんしていると王手しちゃうよまったなしだよ〉2年、藤原祐奈。冬の日だまりのような、暖かさ。

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