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社説:税と社会保障改革 まずは政府・与党案急げ

 消費税を含む税と社会保障の一体改革をめぐる関係閣僚会議の準備会合が開かれ、6月の取りまとめを目指した作業がスタートした。

 まずは、この改革の重要性を改めて強調したい。日本の社会保障制度は、医療、介護、年金ともに現役世代が中心になって高齢者を支える仕組みだが、これが制度的財政的に維持不可能になりつつある。というのも、1970年代に10人で1人を支えていたのが、現在では3人が1人を、25年ごろには2人が1人を支えざるをえないという急速な少子高齢化が進展しているからだ。

 制度を設計し直して持続可能なシステムとして再活性化させることは、国民に安心を与えるだけでなく、国家財政を立て直し、民間経済を元気にさせるためにも必要不可欠な課題になっている。12年には団塊世代が大量に年金受給者となることや、日本の財政赤字に対する市場の評価が次第に厳しくなっていくことを考慮すると、改革の緊急性も高まっている。問題は制度改革を担保する財源として消費税増税が欠かせないことである。議論の出発点に当たり、与野党に注文をつけたい。

 政府・与党は、成案作りに向けてフル回転で組織内論議を行うべきである。制度改革も増税も生やさしい論議ではない。夜間や週末を使っての侃々諤々(かんかんがくがく)の論議を期待したい。政府・与党がやる気を見せない限り国民の支持も得られないだろう。

 論議のポイントはいくつかある。年金制度でいえば、マニフェストでうたった最低保障年金をベースとした税方式の年金改革案をそのまま維持するのか、修正するのか。消費税を社会保障支出に限定する目的税にした場合、医療や介護にどう配分するのか。少子化対策は対象にするのか。野党が指摘するように政府・与党が改革の全体像と工程表を伴ったしっかりした案を作り、野党側に示す必要がある。4月の統一地方選で消費税隠しをするような半端な態度ではとても乗り切れないだろう。

 野党も批判するばかりでは国民の理解を得られない。早くも、09年、所得税法の付則に「消費税を含む税制抜本改革を11年度までに法制化する」と明記された問題が与野党間の火種になっている。民主党は、当時与党だった自民、公明両党にも一定の責任があると指摘、自公両党は民主党政権を批判してきた与謝野馨経済財政担当相の入閣に反発する。

 明確なのは、自公も実は改革の必要性を認識していること、与謝野氏が相当の覚悟で成案作りに臨んでいること、最後は菅直人首相の指導力が成否を分けること。そして、与野党はもちろん日本の政治がその真価を問われていることではないか。

毎日新聞 2011年1月20日 2時32分

 

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