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[経済・IT]ニュース トピック:主張
【主張】GDP3位転落 あわてず萎縮せず底力を
昨年の中国の国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界2位になることが確実になった。昭和43年に西独(当時)を追い抜いて以来、「世界第2位の経済大国」という枕詞(まくらことば)が消えてしまう。
しかし、いたずらに慌てたり、萎縮する必要はない。悲観する理由もない。3位転落を機に官民挙げて日本経済を総点検し、日本の底力を発揮する多様な挑戦に打って出るべきだ。
第一の鍵は企業の成長戦略だ。韓国、台湾企業などの追い上げで長年成長の牽引(けんいん)役だった自動車・電機を中心とした日本の製造業が苦戦している。グローバル競争の激化で従来の高品質、高価格の製品だけでは勝負ができなくなった。先進国向けの製品とともに、「ボリュームゾーン」といわれる消費意欲の旺盛なアジアの中間層向けに低価格、中品質の製品を開発する「両面作戦」が必要だ。
官民が工夫して環境や交通インフラなど日本の高度技術が生かせる分野で海外進出することも不可欠だ。リチウム電池の開発競争は激しいが、基幹部品は旭化成などの日本企業が握っている。基幹部品をブラックボックス化し、それ以外の汎用(はんよう)品はコストが安い海外で生産するなどのメリハリの利いた戦略を磨くべきだ。
企業の挑戦を後押しするのは政府の仕事だ。高度経済成長期に作られ、ほころびが目立つさまざまな規制の見直しを大胆に行う必要がある。保育や医療、介護などのサービス分野で規制緩和を進め、女性を含む雇用の確保が急務だ。非関税障壁の撤廃や法人税を一段と下げるなど、海外からの投資を招き寄せる努力も欠かせない。
中国に対して国際ルールを順守し、経済大国としてふさわしい行動を取るよう促すことも必要だ。中国はハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)の禁輸や知的財産権の無視、海洋権益の独占など自国優先の行動が目立つ。
人民元を輸出に有利なように実勢に比べて安く抑えている通貨政策も国際的批判を浴びている。政府は主要20カ国・地域(G20)など国際的枠組みを利用して中国に自制を求めなければならない。
市場経済は民主主義と自由競争の精神を基盤として成り立っている。中国の独善的行動に歯止めをかけ、アジアの安定を図るためにも、日本が存在感を高めることが欠かせない。
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