四光波混合の原理

四光波混合(FWM : Four-Wave Mixing)は光カー効果の一種であり,二つ以上の異なった波長の光をファイバ中に入射した際に生じる。FWMは一般には三つの異なった波長の光を光ファイバ中に入射した際に,それらのどの波長とも一致しない波長に新たな光が発生する現象である。発生した光はアイドラ(idler)光と呼ばれる。FWMは光パラメトリック振動の一種である。また、FWMは全ての媒質で誘導ラマン散乱に影響することが知られている。

多くの非線形過程において、光ファイバはそれ自身が直接過程を引き起こすわけではないが、束縛電子の非線形応答を通して光波間の仲立ちをする。この過程は、屈折率など媒質のパラメータが光で誘起される変調を受けて起こるのでパラメトリック過程と呼ばれる。誘導散乱過程(誘導ラマン散乱誘導ブリルアン散乱)は非線形媒質が直接に関る結果位相整合条件が自動的に満たされることに対し、パラメトリック過程が起こるための位相整合の条件は、周波数と屈折率の値を特別な値にとった時にのみ満たされる。

四光波混合の原理

四光波混合は1つまたはそれ以上の波から光子が消滅し、他の周波数のところに新しい光子が作られたときに起こる。これらの光子は、パラメトリック相互作用に おいて全エネルギーと運動量が保存されるように作られる。ここでは、周波数がω1、ω2、ω3、ω4をもつ4つの光波を考える。四光波混合は (1) 3つの光子がそのエネルギーを周波数ω=ω123の光子1個に転換する場合、(2) 周波数ω1、ω2の2つの光子が消滅し、同時にω3412を満たす周波数ω3、ω4の2個の光子を作り出す場合に分けられる。

(1)の場合の四光波混合過程を満たす位相整合条件を、高い効率で起こるようにするのは難しい。しかし、ω123の時は第3高調波の発生、ω12≠ω3の時は周波数2ω13の波への周波数転換となる。

(2) の場合の四光波混合過程の条件は、ω12のとき比較的容易に満たされる。光ファイバーでもっぱら研究されているのが、この光波の一部が縮退している縮退四光波混合(DFWM : Degenerated Four-Wave Mixing)である。物理的に言うと、この過程は誘導ラマン散乱の場合と同じような形で現れる。すなわち、ω1(=ω2)の強力なポンプ光から出た2つの光子が、2つのの異なった光子、一方はプローブ光(診断光)の周波数ω3、他方は周波数ω=2ω13に転換されると考えられる。

ω3をプローブ光ωprobeと考え、ω1とω2をそれぞれポンプ光ωp1、ωp2に置き換えた四光波混合の概念図を示す。ここで、新しく作られた周波数をωidlerとした。また、ωpはωp1=ωp2の時の周波数である。

四光波混合

図1 周波数域における四光波混合の概念図
(a)ポンプ光が2波の場合
(b)ポンプ光が1波の場合(縮退四光波混合)

波長分割多重( DWDM, Dense Wavelength Division Multiplexing)方式による伝送を行う際、多重化した信号間のFWMは伝送性能を劣化させる四光波混合が問題になる。なぜなら、複数波長の信号 が等間隔で配置されている場合、四光波混合によるノイズ光は使用する波長上に発生し信号劣化を引き起こすからである。特に、波長が零分散波長に近いほど四 光波混合によるノイズ光の発生効率が高くなるため、DSF(DispersonShift Fiber) を用いた場合、C-band において問題となる。DWDM伝送を行う際には回避されるべきFWMではあるが、新しい波長を作り出すのに効率がよいため盛んに研究されている。

参考文献