「タイガーマスク運動」には、少し戸惑った。全国的な広がりが報じられると、県内でも相次いで現れた。善意は尊い。とはいえ、注目されないが、善意の寄付や活動は昔からずっと続いている。何が「ニュース」で、どんな「評価」を内に込めて報道するべきなのだろうか▲23日の本紙「時代の風」で、精神科医の斎藤環さんがこの運動を取り上げている。ここでは、実名寄付での気恥ずかしさと、匿名寄付での埋没を乗り越える手段として、「キャラの善意」という考え方を示し、運動はキャラになり切ろうという欲望ではないか、と分析している。ちょうど、アニメのキャラに衣装や態度を似せ、なり切って楽しむ「コスプレ」のように▲斎藤さんは「これが恒常的な慈善行為に結びつく可能性は少ない」と予測しながらも、年の瀬には帰ってきてほしい、と期待する。子どもたちへのプレゼントを抱えたおじさんが年末にやってくる。本当は、サンタクロースがコスプレに目覚めた、ということだったりして。【池内敬芳】
毎日新聞 2011年1月24日 地方版