2011年1月23日11時10分
ホテルオークラ神戸の地下水くみ上げ設備。地下約200メートルから取水する=神戸市中央区、新井義顕撮影
■料金割引や利用規制で対抗
地下水の専用水道の増加は、公共水道を運営する自治体にとって大きな打撃だ。大阪市では2010年度までに、病院など30施設が公共水道に加えて地下水の専用水道を併設したため、約7億円の減収となった。神戸市でも09年度までに少なくとも20施設が導入し、年間約4億5千万円の減収となった。
ただ、公共水道の料金制度にも課題はある。水道事業者の約3分の2は、使用量が多いほど単価が高くなる料金制度。使用量が増えるとダム建設などの負担が生じるため、利用を抑制させる狙いだ。
こうした料金制度がもとで大口利用者に逃げられないよう、割引制度を導入する自治体もある。佐賀市や京都府長岡京市、前橋市は、一定水量までは使用料に応じて単価が高くなるが、それを超えると単価が安くなっていく仕組みに変えた。滋賀県草津市は03年に条例を改正して料金制度を変えるとともに、大口利用者が地下水を導入しようとする場合に市長が中止を指導できるようにもした。
環境省によると、地下水は土地の所有権に属する「私水」との位置づけだ。ただ、1件あたりのくみあげ水量が少なくても、件数が増えれば地盤沈下などの影響が出る可能性も指摘されている。東京都は地下水利用について、工業用水法など国の規制より厳しい規制を条例で定め、地盤沈下に対応してきた。
昨年2月に発足した超党派の国会議員連盟は、地下水を「公共水」と位置づける「水循環基本法」の原案を昨年10月にまとめた。今後、法案の上程を目指すという。
神戸市では昨年3月、学識者らの審議会が「地下水水道の設置者に適正な負担を求めることが必要」との答申をまとめた。だが、対応はこれからだ。市水道局の担当者は「公共水道を使うか使わないかは利用者の自由。法律の規制がないのに、収益が下がるから地下水を使うのをやめてくれとは言えない」と話す。(日比野容子)