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社会

はやぶさ搭載カメラ設計 神戸大・中村昭子准教授に聞く 

写真

「カプセルの公開をきっかけに、宇宙に関心を持つ子どもが増えてほしい」と話す中村准教授=神戸市灘区六甲台町、神戸大

 数々のトラブルを乗り越え、7年に及ぶ宇宙の旅から昨年、地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。採集した微粒子の分析が大型放射光施設「スプリング8」(佐用町)などで始まり、微粒子を収めたカプセルなどが27日から、神戸で県内初公開される。はやぶさ搭載カメラの設計に関わり、十余年にわたってプロジェクトのメンバーだった神戸大の中村昭子准教授(惑星科学)も、構造の解明を心待ちにする。(仲井雅史)

 ‐はやぶさプロジェクトが始まったのは1994年。

 「宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、太陽系形成過程の解明を目指して始めた。JAXAの前身の研究所で助手をしており、搭載カメラの設計に携わった。宇宙空間という過酷な環境での撮影に最適なピント、感度の設定を目指したが、参考になるデータはなく、隕石(いんせき)を粒にしたサンプルを使って実験を繰り返した。一度打ち上げると、調節できないので必死だった」

 ‐2003年に打ち上げは成功。搭載カメラは、小惑星イトカワを鮮明にとらえた。その後、神戸大の研究者らとともに分析に取り組んだ。

 「05年9月、イトカワの形が分かる映像が届き始めた時には、言葉にできない感慨が込み上げた。画像のほかレーザー高度計のデータや重力測定から、ピーナツのような独特の形をしていることなど、さまざまな情報を得ることができた」

 「密度を算出したところ、従来考えられていた一枚岩ではなく、隙間だらけの構造であることを突き止めた。衝突で壊れた小惑星の破片が重力によって集まり、イトカワが誕生したことを示している。世界初の確認で、惑星の形成過程を知る上で大きな成果。06年度に論文を発表し、神戸大チームは解散した」

 ‐はやぶさはイトカワの微粒子約1500個を持ち帰り、スプリング8などで形状や内部構造の解明が始まった。

 「プロジェクトでは金属球を発射して岩石を砕き、回収する方法に挑戦し、私も助言した。だが残念ながら失敗したので、サンプルが回収できていたと聞いて驚いた。地球の岩石はマグマの高温で変質したが、イトカワは太陽系誕生時の状態を比較的よくとどめているとみられる。サンプルは太陽系がどのようにできたか知る上で欠かせないもので、世界的に注目されている」

 ‐こうした成果もあり、政府は11年度の科学研究費を増額する。

 「華々しい成功の瞬間だけが注目されているが、地味な実験の繰り返しや他の衛星の失敗など、長年にわたる基礎研究の積み上げがあればこその結果。成功の背後にある多くの研究者の努力に光が当たることを期待している」

      ◆

 カプセルの特別公開は神戸市立青少年科学館(同市中央区港島中町7)で31日まで。同館TEL078・302・5177

(2011/01/23 16:00)


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