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【イラク×北朝鮮】 北朝鮮の敗因

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■ グループD

グループDの最終節。1敗1分けの北朝鮮と、1勝1敗のイラクの対戦。もう1つのカードは2連勝ですでにグループ1位での決勝トーナメント進出を決めているイランと、1敗1分けのUAEのカード。イラクは引き分け以上で決勝トーナメント進出が決定する。北朝鮮は勝つしかない状況である。

北朝鮮は<4-4-1-1>。1トップにFW鄭大世が入って、ロシアリーグのロフトフでプレーするFWホン・ヨンジョがその下。ベガルタ仙台のMF梁勇基がスタメン。左サイドに入る。対するイラクは2007年のアジアカップのMVPと得点王に輝いたFWユニス・マフムードに期待がかかるが、今大会まだゴールはない。

■ イラクが2位通過

試合の序盤は北朝鮮がいい形を作るが、徐々にイラクが試合のペースをつかんでいく。すると前半22分にミドルシュートのこぼれ球をMFカッラル・ジャシムが押し込んで1点を先制する。勝つしかない北朝鮮はパスの精度を欠いてなかなかチャンスに結び付けられず。1点ビハインドで前半を終了する。

後半の途中から両チームの運動量が落ちてきて北朝鮮にも何度かゴール前でチャンスが生まれるようになるが、イラクも体を張った守りでゴールを許さない。結局、そのまま1対0でイラクが勝利。勝ち点を「6」に伸ばして2位通過を決定。ベスト4をかけてオーストラリアと対戦することになった。

一方の北朝鮮は今大会のダークホースと言われていたが、0対0、0対1、0対1という成績で2敗1分け。無得点で大会を終えることになった。

■ イラクがベスト8

イラクは初戦でイランに1対2で逆転負けしたものの、持ち直して2勝1敗で2位通過を決めた。引き分け以上で勝ち抜け決定という有利な条件であったが、選手たちは落ち着いてプレーしており、主導権を握ったまま時計を進めることが出来た。

イラクは2004年のアテネ五輪でベスト4。さらに2007年のアジアカップを制したが、ここ数年は国内の混乱もあってやや低迷しており、南アフリカW杯出場も逃したが、今大会でベスト8に入って復活を印象付けた。もともと、非常に技術ある選手が揃っており、身体能力も優れている強豪であるが、今回のチームも技術のある選手が揃っていて、力のあるチームといえる。

攻撃は、FWユニス・マフムードが中心で、彼の「高さ」と「キープ力」が前提で成り立っているので依存度は高いが、「高さ」も「スピード」も「決定力」もあるアジアでもトップクラスのストライカーである。相手にとっては怖い選手であり、格上のクラブを相手にしたときも番狂わせを起こせる期待感はある。準々決勝は、オーストラリアが有利なのは間違いないが、オーストラリアのセンターバックはスピードがあるとは言い難く、何度かチャンスは作れるだろう。これを決められるかが、ポイントになる。

■ 無得点で敗退

一方の北朝鮮はまさかの無得点でのグループリーグ敗退となった。スコアは0対1と僅差ではあったが、内容的にはイラクとは差があった。

誤算は2トップの不調。FW鄭大世は、何度か「さすが」と思わせるプレーでシュートチャンスを作ったが、「キレ」や「運動量」はいつものFW鄭大世ではなく、明らかにコンディションは良くなかった。その下に入ったFWホン・ヨンジョも、この日はパスミスが目立って、チャンスをつぶすシーンが多かった。

MF梁は左サイドを起点にチャンスを作ろうと奔走したが、FW鄭大世との距離が遠く、なかなかいい形でパスを受けられずに埋没してしまった。MF梁の攻撃力を生かせるような戦い方が出来ればよかったが、そこまでチームは成熟されておらず、MF梁が周りを生かすために走り回らざる得ない状況であった。

■ 北朝鮮の敗因

上位進出も期待された北朝鮮であるが、結局、中堅グループの域は超えられずに終わってしまった。

ドイツでプレーするFW鄭大世、ロシアでプレーするFWホン・ヨンジョ、日本でプレーするMF梁やMFアン・ヨンハら、国外でプレーする選手が増えてきており、また若い世代には世界大会を経験した選手も多いので、以前のような国際経験が不足しているチームではなくなってきているが、まだ、ナイーブは感じられた。中東の国は時間の使い方も上手く、レフェリーを欺くようなプレーも得意としているが、このあたりで北朝鮮との違いが感じられた。

また、イレブンの中で、力の差が大きかったことも敗因であり、FW鄭大世やMF梁勇基といった選手は、アジアでもトップクラスに近い実力を持つ一方、サイドバックの選手やゴールキーパーの選手は、技術的にも劣っており、「凡ミス」も目立っていた。特にキックが「雑」な選手が多いことが気になった。

一昔前は、日本でも、(特に高校サッカーなどは、)一部のポジションで明らかな穴があって、そこを突かれて崩されることが多かったが、近年は、黒子のポジションでも優秀な選手を揃えてくるチームが多くなって、ポジションによる選手のレベル差はあまり感じられなくなっているが、今大会の北朝鮮は、レベルの低い選手も混じっており、目指すサッカーがありながらも、その途中で想定外のミスが起きてイメージどおりのサッカーを見せられなかった。

■ ベスト8が決定

これでグループリーグが終了。サウジアラビアが敗退したことは予想外であったが、それ以外は順当な顔ぶれといえる。

日本のライバル国のなかで、状態がよさそうなのは韓国であるが、質の高いストライカーがおらず、チャンスを作る割には決められていないという欠点もある。また、南アフリカ大会に引き続いて、守備陣はあっさりと崩されるシーンも少なくない。付け入る隙はある。準々決勝で苦手のイランと対戦するが、五分五分の戦いになりそうで、韓国がベスト8で散ることも十分に考えられる。

反対側のグループではウズベキスタンがいいサッカーを見せている。守備に不安は残るが、娯楽性の高いサッカーを見せており、準々決勝がヨルダンが相手ということも有利である。もう一つのカードのオーストラリアとイラクの試合。オーストラリア有利なことは間違いないが、単調なオーストラリアの攻撃を止められるかどうかが勝負の分かれ道となる。もちろん、単調とはいえ、分かっていても止められない武器をオーストラリアは持っているので、イラクは注意したいところである。

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